月から滑り棒を使って地球に降りることはできるのか。5歳の男の子の疑問に、NASA元研究員でコミック作家のランドール・マンローさんはどう答えたのか。著書『もっとホワット・イフ?』(早川書房)からお届けする――。

※本稿は、ランドール・マンロー(著)、吉田三知世(訳)『もっとホワット・イフ? 地球の1日が1秒になったらどうなるか』(早川書房)の一部を再編集したものです。

月から地球に降りる“滑り棒”はつくれるのか

私の息子(5歳)に今日質問されたのですが、月と地球のあいだに、消防署の滑り棒のようなものがあって、月から地球に降りられるとしたら、月から地球まで降りるのにどれだけの時間がかかりますか?――ラモン・シェーンボルン、ドイツ

まず、問題を整理しよう。

実際には、地球と月のあいだに金属の棒を設置することはできない(*)。棒の月の側の端は月の重力によって月のほうへと引き寄せられ、それ以外の部分は地球の重力で地球のほうへと引き寄せられる。そのため棒は2つに引きちぎられるだろう。

* 1つには、NASAの誰かが怒鳴り込んでくるだろう。

この計画にはもう1つ問題がある。地球の表面は月よりも速く回転するので、地球に下がっている側を地面に固定しようとすると、こちら側の端が折れてしまうのだ。

さらにもう1つ問題がある(**)。月は地球から常に同じ距離にあるわけではないのだ。軌道に沿って進むにつれ、近づいたり遠ざかったりする。大きな違いではないが、長さ数十万キロメートルの長さの滑り棒が、毎月1回地球に押し付けられてつぶれるのに十分な違いだ。

** はい、これは嘘です――さらに数百個の問題がある。

だが、こういった問題は無視してしまおう! 月から垂れ下がってきて、地球の表面の少し上まで届く魔法の棒があって、それが伸び縮みして、決して地面に接触しないとしたらどうだろう? この棒で月から滑り降りるにはどれだけの時間がかかるだろう?