AFURIの社長はフェイスブックで憤りを表明

AFURI社も黙っているわけではない。反論を繰り出すのだが、吉川醸造の巧みな広報対応とは対照的に「あまりに下手」であった。

AFURI社としての公式見解を発表する前に、AFURI社の中村比呂人社長はフェイスブックで憤りを表明してしまったのだ。その文面は熟考したとは思えない、じつに感情的なものだった。以下に、私が気になった部分を引用したい。

不動産業を大きくやられているシマダグループさんという企業が、コロナ禍に、伊勢原市の吉川醸造さんという酒蔵を買収し、リブランディングして「雨降AFURI」という日本酒を販売し始めたんですね。

吉川醸造を「不動産業を大きくやられているシマダグループ」としている。相手は「地域の代表ではなく不動産会社の一員に過ぎない」と言いたかったのだろうが、前後の文脈からは唐突だったし、どこか小賢しい印象を受けてしまう。

そして社長の「お気持ち表明」は続く。AFURI社としては、最初から法廷闘争を望んでいたわけではなく、解決策を提示したというのだ。

AFURI
AFURI(写真=Wei-Te Wong/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

「傲慢さ」が感じられる提案内容

「雨降」と書いて、「UKOU」と読ませるのはいかがですかと。そうすれば、阿夫利山は、元々は「雨降り山」から転じていると我々と同じルーツである事を伝えられるし、海外のAFURIの店舗でも吉川醸造さんの日本酒を同じ水源の仕込み水を使っている同郷の日本酒として全面的に推せますし。共にタッグを組んで世界に打って出ましょう! などなど、様々な提案をしましたが、結局受け入れては頂けず平行線で終わってしまって。

この「提案内容」には、多くの人が傲慢さを感じるのではないか。そして最後は「地域名を独占しようとしている」という批判に反論する。

ネットでは、地域の名称である「あふり」を独占するなんてとんでもない! と言う事になってますが。(中略)「八海山」とか「高千穂」とか、地域の名前だけど、商標として登録されてますよね。

親や教師に怒られた子どもが「他の子もやっているのに、何で自分だけが怒られないといけないのか」とキレているような幼さを感じてしまった。

フェイスブックという「友達への公開」が前提となっているプラットフォームだけに思いの丈を吐き出したのかもしれない。だが、「炎上で注目されている企業の経営者」としては、あまりにも脇が甘かった。