卵子を一度にたくさん採取する

話が前後してしまいますが、体外授精をするためには、まず、卵子を採取(採卵)しなければなりません。そこで、排卵誘発剤を使って卵巣の活動を活発にし、卵子を成熟させて採卵することが必要となります。

その際、卵子は複数採取されます。一度にたくさん採る、と聞くと不安を抱く人も多いでしょう。ただ、体内には卵子になる予定の卵母細胞は万単位であり、通常の排卵周期でもその中の数十個が目を覚ましています。しかし、その多くは卵子となりえず、結局、体に吸収されていく。体外受精の場合はそうした使われず吸収される卵母細胞を、卵子にまで育て、採卵しています。だから、通常のサイクルを効率的にしているだけで、「採りすぎでなくなってしまう」という心配は、不要なのです。

30代中盤であれば、この時に10個以上の卵子を採取できることも少なくありません。30代後半以降になると採卵数が減ることも多いので、排卵誘発剤が使われることになります。それらに対して体外受精を行うと、複数の卵子が受精します。この全部を一度に子宮に戻すのではなく、いくつかは凍結して保存します。そして、子宮に戻した受精卵が着床しなかった場合、次の排卵周期に、凍結した胚(受精卵)を戻します。

顕微授精
写真=iStock.com/Inna Dodor
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ちなみに、凍結などしてしまうと、うまく妊娠できないのではないか、という疑問がわきそうですが、現実は逆で、凍結胚の方が着床率は高く、妊娠に成功しているのです。その理由は、排卵誘発剤を打った直後だと体内にその影響が残るため着床率が悪く、凍結をしてしばらく時間が経ってから戻したほうが(体も回復し)率が上がるからではないか、と考えられています。

医師により、施術の方針は異なる

プロセスごとにこれらの多様な施術を施して、確率が上がるよう、不妊治療は進化してきました。

ただ、その歴史はそれほど長くありません。ここに挙げた施術の多くが、40年前には、なかったものばかりです。つまり、まだ発展途上であり、治療成果にも、施術に関する方針にも医師による違いが見られます。