「まぁ、こんな人だからしかたがない」

「かくあるべし思考」から解放されるには、「人には人の価値観がある」ことを受け入れることです。それを理解すれば、他人の言動に振り回されずに済むようになります。

先ほどの夫婦の例でいえば、妻は自分が掃除をしたいときにして、やりたくないのならばやらなければよいでしょう。一方、夫は、部屋が汚れていて嫌ならば、妻に文句をいうのではなく、自ら掃除をすればよいだけの話です。

「自分がやりたいように生きる。そのかわり、自分の価値観を相手に押しつけない」と思えたとき、自分のなかの「かくあるべし思考」の多くが消えていくはずです。

では、相手が「かくあるべし思考」を押しつけてきたときには、どうすればよいでしょうか。それは、相手の発言を「スルーする(気にしない)」ことです。

相手の話を無視するわけではなく、「まぁ、こんな人だからしかたがない」と心の中で受け流し、口では「そうかもしれないね」といっておけば、相手と険悪になるのを防げます。

人間には、いろんな価値観があって当然です。他人にまで自分の価値観を押しつける必要はありません。感情的にならずに柔軟に対応できれば、気ままに生きている他者にも寛容になれるでしょう。

ロシア・ウクライナ問題の本質

人の判断をゆがめてしまう不適応思考には、「かくあるべし思考」のほかに、「二分割思考」があります。

二分割思考とは、物事を白か黒かにハッキリ分けて考えてしまう極端な考え方です。

「敵か味方か」「正しいか正しくないか」「正義か不正義か」「善か悪か」「安全か危険か」など、中庸の考えを持たず、完全に2つに分けてしまいます。

一般的なパズルピースに接続された反対の黒と白の矢印の反対の等角
写真=iStock.com/Dmitrii_Guzhanin
※写真はイメージです

たとえば、ロシアとウクライナの戦争に対する意見が、わかりやすい典型例です。

冷静に考えれば、戦争とは、どちらか一方が完全に悪で、もう一方が完全に正義ということはありません。ウクライナ侵攻によって大変な被害が出ているのは事実ですが、ロシアにしてみれば、元は同じ国だったという意識があるなど、それなりの言い分があったのでしょう。

ところが、そんなことを、たとえば私がテレビで発言したら、大変な騒ぎになってしまいます。日本人は二分割思考の人が非常に多いからです。「ロシアが100%悪で、ウクライナが100%正義」と思い込んでいる視聴者に向かって、

「まぁ、ロシアだって、ウクライナが西側につくとなれば、自国を(おびや)かされそうで怖いし、強い不安を抱えてしまったのではないでしょうか」

そんなことをいおうものなら、誹謗・中傷の嵐が吹き荒れるはずです。このように、他者を一方的に批判する人は、ほぼ間違いなく二分割思考に囚われています。