年を重ねてもご機嫌に過ごす人は何をしているか。医師の和田秀樹さんは「加齢とともに、前頭葉の萎縮が進むと、人は無意識のうちに『善か悪か』『敵か味方か』の二分割思考に囚われやすくなる。そうではなく、『限りなくグレーが広がっている』と考えられることで、大らかな気持ちを育まれ、心の成熟にもつながる」という――。

※本稿は、和田秀樹『65歳から始める和田式心の若返り』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

リビングに掃除機をかける
写真=iStock.com/diego_cervo
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掃除を手伝わずにゴロゴロする夫の価値観

1つ、質問です。自分が休むヒマもなく掃除をしているというのに、ともに暮らす人がソファでゴロンとしていたら、あなたはどう感じますか。

その答えで、先述した「かくあるべし思考」に縛られやすいかどうかが、だいたいわかります。

多くの場合、「かくあるべし思考」に縛られやすい人は、自分に厳しい一方で、人にも厳しくなっています。

たとえば、自分が掃除をしているときに、「夫がソファで寝転んでいるのを見ると無性に腹が立つ」という女性たちの嘆きを聞くことが、多々あります。

夫の気持ちばかりを代弁するつもりではありませんが、夫が掃除を手伝わずにゴロゴロしているのは、妻を挑発したいわけではないのです。

おそらく、部屋が散らかっていても気にならないだけでしょう。そんな夫に腹が立つのは、妻に「家はキレイにしておくべき」という思考の偏りがあるためです。

一方、掃除をしない妻に、「部屋が汚い」と文句をいう夫もいます。これも、夫の思考の偏りから出てくる言葉です。

「部屋はキレイなほうがいい」と思っていながら自ら動かず、妻に文句をいうのは、「掃除は女がするもの」という古典的な「かくあるべし思考」に囚われている証拠です。

自分自身の決めつけが相手へのマイナス感情を生む

私たちは、怒ったりイライラしたりする際、つい「相手が悪い」と思いがちです。

しかし、人に厳しくなる本当の理由は、自分自身にあります。自分の「かくあるべし思考」が相手の言動に違和感を覚えて、思い通りに動かない相手にマイナスの感情を抱いてしまうのです。

そもそも、この世界に唯一絶対の正解はありません。自分には自分の価値観があるように、人には人の価値観があります。

そうだというのに、「自分は絶対に正しい」と一方的に思い込めば、相手の価値観を否定することになります。当然、否定されれば相手の心にも反発心が生まれます。

「自分のほうが正しい」
「いや、絶対に自分は間違っていない」

このように、「どちらが正しいか」という議論を続けても、解決はできません。

反対に、正しさで自分を縛れば縛るほど、不機嫌やストレスから逃れられなくなります。自由気ままに振る舞って、楽に生きているように見える他者を許せなく思えるのです。