色々な人が言うバラバラなことを1枚に整理する

マップの作り方の説明の前に、まず完成形のマップを見ていただきましょう(図表1)。約10年前に作ったマップです。マップとはどういうものか、イメージを持っていただければと思います。

このマップは、私と、過去に医療業界で仕事をした経験があるメンバーとの2人で作りました。きっかけは、そのメンバーの問題意識でした。

彼は、「日本の医療機器メーカーが海外企業に負けている」という問題意識を持っていて、その理由を色々と私に説明してくれました。しかし、当時はまだ医療機器の知識が乏しかった私にはなかなか理解できませんでした。とにかく色んな話がぐちゃぐちゃに語られていると感じたのですが、当の業界にいると、すべてが常識的に理解されて前提を飛ばして議論するので、普通の人にはわかりにくいのだろうと思いました。

そこで、ホワイトボードを使って、「それって、こういうこと?」と順番に彼の言っている話を整理していくと、「そうなんです」と言うので、「本当だったら凄いことだけど、そのままじゃ伝わらないから、何がどのくらいなのか定量化していこうよ」と、ひとつひとつ紐解くように定量化していきました。

何度も繰り返すうちに、少しマップらしくなってきたので、マップを持って様々な有識者に話を聞きに行って、マップを進化させていき、完成させました。

「なぜ、日本の医療機器メーカーは海外企業に負けているのか?」という疑問を、厚生労働省、経済産業省、医療機器メーカー、医療関係者などにぶつけると、会う人、会う人が違うことを言います。中には「負けていない」と言う人もいます。

それは、それぞれが自分の専門分野のことだけを話すからです。例えば、ある人はMRIやCTの話をします。またある人は人工関節や人工血管の話をします。手術の糸や注射針の話をする人もいました。

色々な人が色々なことを言うのは当然です。それぞれ自分が大事だと思うことを話してくれるからです。専門家にはそれぞれの立場があり、専門にしている分野は細かく分かれています。

それら全部の話を聞いて、自分たちなりに捉え直し、構造化して、1枚の紙の上に表現したものが、マップです。

マップがあると対話が深まる

マップができると、一見矛盾するように思える色々な人たちの話が理解できるようになります。

「Aさんは全体の中のこの部分について話していて、Bさんは別のこの部分の話をしているのだな」ということがわかるようになるからです。すると、相手とより深い話ができるようになります。全体像を示しながら、「あなたの話はこのあたりのことですね」と共通認識を持ったうえで、その部分の議論ができます。

また、このマップを見せながら話をすると、相手にとっても気づきが得られます。「この人と議論をすると得られるものがある」と相手に思ってもらえると、関係が深くなりますし、その後のビジネスプロデュース実現に協力してもらいやすくもなります。