現役時代にコツコツ貯め、晩年はグルメを楽しんだ

① 質素倹約の生活をしておられたこと

戦争を経験したSさんは、贅沢は敵だと教えられて育ったため、そもそも贅沢をしない習慣が身についていました。また、良い意味でも悪い意味でも、他人の目を気にします。だから財を成してもお金を持っていてもひけらかすことをせず、ましてや「自分らしく」など、余計な見栄を張ることなく生きておられました。

なので若いときから、稼ぎが多いときも少ないときも、コツコツと貯蓄をされていたようです。

② 健康に気をつけ、生涯現役で働いておられたこと

Sさんの家系は、Sさんの両親、兄弟、奥さままでも100歳超えという、長寿なご家族。そのSさんが98歳で亡くなったときのこと、息子さんがちょっぴり残念そうにこうおっしゃったのです。

「親父も晩年グルメに走らなかったら、100歳超えて生きただろうにな……」

聞くと、92歳までは毎日必ず畑に出て農作業をしていたSさんは、パタッと作業に出なくなり、代わりに毎日「テレビ番」をするようになったそうです。そして、テレビで美味しそうな海老フライの店が取り上げられるなどすると、決まってそこへ出かけて行って美食を堪能したと言います。

照り焼きチキンとサラダミールを食べるシニア男性
写真=iStock.com/RobynRoper
※写真はイメージです

息子さんはそう言うけれど、末広がりの人生を歩み、しかも晩年にはグルメを楽しんで98歳まで生きたのですから、決して悪くない人生です。

いずれにせよ、お金、健康、人間関係に恵まれたSさんの人生の秘訣を息子さんに尋ねたところ、「早寝早起きして、毎日身体を動かし、食べ過ぎず、贅沢をせず、生涯現役で、働くことを楽しむこと」という答えが返ってきました。

老後のために「若いときに心と財産を育てる」

③ 地域の方々との交流を大切にしておられたこと

Sさんは、戦後の開墾入植によって住まいと生活を築きました。特に機械化されていなかった昔の農家は、自分1人だけですべての作業ができるわけではありません。家族とも、近所の人とも助け合わなければ、生活していくことができませんでした。

また、個人の生活だけでなく、村の祭りや行事、葬儀など、利他の精神をもって、コミュニティーの面倒な役回りを積極的に引き受けたりして、地域社会への貢献にも努めておられました。