デベロッパーが推進する地方都市の駅前再開発

デベロッパーの一部は現在、こうした需要を取り込もうと地方主要都市や郊外衛星都市の駅前で数多くの市街地再開発事業を推進している。この開発方式は、郊外や地方都市の主要駅の駅前で、既存の商店などに声をかけて市街地再開発組合を設立。彼らの持つ店舗などの権利を再開発で出来上がる新しい商業施設やマンションなどの床に権利変換できるものである。

商店主らにとっては高齢化もし、子供たちも引き継がないお店や事業をたたむのに、単独では開発できなくとも、組合を結成して自らの不動産を差し出し再開発することによって無償で新しい建物の床を取得できるという誠に夢のような開発方式なのだ。

なぜ彼らが無償で取得できるかと言えば、彼らの持つお店などの不動産価値を測定し、その価値分の床に変換できるからだ。そして新しい建物は自治体から容積率のボーナスをもらい、超高層建物を建設。その建設資金をデベロッパーがすべて負担してくれるからだ。

高層ビルの建設現場
写真=iStock.com/Japanesescape_Footages
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タワマン分譲で開発資金を回収するつもりが…

もちろん、デベロッパーは出来上がる建物の床を買い取り、タワマンにして分譲。開発資金を回収し利益を得る。マンション分譲にあたって有力な顧客は、その地域で相続が心配になった富裕層などに買ってもらう、この事業はこういった図式によって成り立っている面もあるのだ。この方式には自治体も容積率のボーナスを認める代わりに、建物内にホールや図書館などの公共施設を整備することができるので、喜んで開発を認める傾向にある。

だが、肝心の相続対策で買ってくれる人がいなくなってしまうと売れ行きはどうだろうか。東京都心部であれば、不動産投資を目的とした国内外投資マネーが入るし、なんとか富裕層の仲間入りがしたいパワーカップルがたっぷりのローンを組んで買ってくれるかもしれない。だが郊外衛星都市や地方都市ではそんな顧客は少数だ。

この改正で実は打撃をくらうのは、相続対策のつもりで買い、いまだに相続が発生していない現所有者と、これから郊外衛星都市や地方都市などでタワマンを想定した市街地再開発事業を積極的に手掛けているデベロッパーだ。