なぜ日本経済は停滞しているのか。元ソフトバンク社長室長の三木雄信さんは「日本の企業の組織構造に問題がある。多くの企業は、仕事の責任を上司が持たず、現場にリスクだけ負わせる。これでは、誰も新規事業をやりたがらないし、プロジェクトがうまくいくはずがない」という――。(第2回)

※本稿は、三木雄信『仕事が速いチームのすごい仕組み』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

日本国旗とグラフ
写真=iStock.com/NatanaelGinting
※写真はイメージです

なぜあなたのプロジェクトは失敗するのか

「プロジェクト的な仕事」が増えているのに、プロマネのスキルを身につけた人は少ない。

こうした現状が、日本企業に大きなマイナスの影響を与えています。

そもそも「プロジェクト的な仕事」では、誰がプロマネの役割を担うのかもはっきりしないことがほとんどです。

その結果、日本のあらゆる職場で同じような失敗パターンが繰り返されています。

そのパターンをわかりやすくグラフ化したのが図表1です。

これはプロジェクト・マネジメントのプロフェッショナルであり、私もソフトバンク時代にプロジェクト・マネジメントの研修をお願いしたことがある中嶋秀隆さんが翻訳された『PMプロジェクト・マネジメント入門』(マリオン・E・ヘインズ著/日本能率協会マネジメントセンター)で紹介されていたグラフを参考に、私なりのアレンジを加えたものです。

見ていただくとわかる通り、グラフの横軸が「時間の経過」、縦軸が「活動レベル」を表しています。

プロジェクトチームの士気が一気に下がる「あるひと言」

たいていのプロジェクトは、メンバー同士で明確な役割分担もしないまま、「とりあえず、やれることから始めよう」と各自が思いつくまま何となく作業を開始します。

しばらくはそのまま活動レベルが上がっていきますが、あるA地点まで来ると、誰かが「このやり方のままでいいのかな」「前のプロジェクトではこんなことはしなかった」などと言い出します。

すると他のメンバーも不安に思い始め、「確かにそうだな。進め方を見直そう」と再検討が始まり、いったん活動レベルが停滞します。

その後、メンバー同士で仕事の進め方について合意がなされると、再び作業が開始されます。

ところがB地点に来ると、今度は会社の上層部やクライアントから「ちょっと待て。自分が考えていた方向性と違うから、やり直してくれ」と想定外の注文が飛び出します。

いわゆる“鶴の一声”です。

ここで活動レベルは限りなくゼロに近いところまで落ち込み、仕事は振り出しに戻ります。