みずほコーポレート銀行が今年から、三井住友銀行、みずほ銀行、りそなホールディングス(HD)が来年から法人税を納税する方針を明らかにした。三井住友銀行は15年ぶり、りそなHDにいたっては18年ぶりの納税になるという。すでに昨年から三菱東京UFJ銀行が10年ぶりに納税をしており、これで大手銀行が軒並み納税を再開することになる。

バブルの崩壊にともなう日本の民間銀行による不良債権の処理額は累計で100兆円を超えていたものと見られている。そして、2006年3月期にその不良債権の処理が一巡するまで、大手銀行をはじめ各銀行の経営の足を引っ張ってきたのだ。

しかし、この06年3月期に大手銀行は決算で過去最高となる合計3兆円もの連結最終利益を計上したものの、法人税を納めずに済んだことから一部で「なぜ銀行だけを過剰優遇するのか」と批判の声があがった。1999~08年までの10年間で、金融・保険業界全体の実質業務純益等が約78兆円もあったのに対して、納めた法人税は1割以下の同7.6兆円にとどまったと指摘する声もあり、国民感情としても納得いかなかったのも無理がないだろう。

では、銀行が法人税を納税しているかどうかをチェックするのには、決算書をどう見たらよいのかを説明しよう。いま手元には、みずほフィナンシャルグループの04年3月期の連結財務諸表があるのだが、このなかの損益計算書を見る。

そこには前期の実績も示されていて「税金等調整前当期純損失」は2兆2621億7200万円もの巨額な赤字を計上していたことがわかる。所得に対して課税される法人税が納められていないことは誰の目にも明らかであろう。

「法人税、住民税及び事業税」は222億8800万円となっているが、これは利益に関係なく、資本金や従業員の規模に応じて課せられる住民税の「均等割」と呼ばれる分の納税などによるものと考えられる。

問題なのが当期で、税金等調整前当期純利益が8812億4000万円と黒字になったのに、法人税、住民税及び事業税は280億5500万円と前期と比べて57億6700万円しか増えていない。おおまかに計算すると、その利益に約40%の税率の法人税が課税され、「8812億4000万円×0.4」で3524億9600万円ほどの法人税の分が計上されてもおかしくないはずだ。前期とほぼ同水準の納税額であったということは、法人税などを納税せずに住民税の均等割などの納税で済ませていたものとわかる。

どうしてこうしたことが許されるのかというと、企業が決算で赤字(欠損金)を発生させてしまった場合、その赤字分を翌期以降に持ち越して黒字(課税所得)と相殺することができる「繰越欠損金」が、法人税に関しては認められているから。

わかりやすいように図を使って説明しよう。第0期に100億円の赤字、つまり繰越欠損金を出したとする。そして第1期から第5期までそれぞれ20億円ずつ黒字を出したとしても、第5期で赤字との相殺が解消されるまで課税所得はゼロと見なされて、法人税を納めなくてもよいことになる。ただし、この繰越欠損が認められるのは最大で7事業年度まで。先の大銀行も巨額な繰越欠損金を抱えていたので、利益を出しても法人税の納税を免れてきたのだ。

その大手銀行が法人税を納めてくれるようになるのだから、われわれ国民としたら諸手をあげて歓迎すべきところなのだろう。しかし、私には素直に喜べないところがある。それというのもサラリーマンの場合、たとえ家計が赤字になっても繰越欠損金は一切認められず、所得税がフルにかかってくるからなのである。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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