現在50代女性は20代の時に2歳下の男性とアメリカで結婚、2人の子を出産した。だが30歳の時、もともと浮気性タイプの夫が不倫。離婚することを決め、子供を連れて帰国した。夫は最終的に愛人にも捨てられ、「やっぱりあなたを愛している」と女性に復縁を迫り、女性はそれを受諾して再婚。ところがそれから十数年後、夫が1400万円の借金をしていることがわかり、別の女との不倫も発覚した――。
赤いバラの花束にカード
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ある家庭では、ひきこもりの子供を「いない存在」として扱う。ある家庭では、夫の暴力支配が近所に知られないように、家族全員がひた隠しにする。限られた人間しか出入りしない「家庭」という密室では、しばしばタブーが生まれ、誰にも触れられないまま長い年月が過ぎるケースも少なくない。そんな「家庭のタブー」はなぜ生じるのか。どんな家庭にタブーができるのか。具体事例からその成り立ちを探り、発生を防ぐ方法や生じたタブーを破るすべを模索したい。

同棲と海外留学

関東在住の日向杏樹さん(仮名・50代・バツ2)は、21歳の時、大学に通いながら飲食店でアルバイトをしていた。そのアルバイト先で2歳下の男性と知り合う。特にタイプなわけではなかったが、不思議と惹かれていき、3カ月後には男性が日向さんのアパートに転がり込む形で同棲が始まった。まだバブル景気の名残りがある、1991年のことだった。

ある日、日向さんは男性とお互いのバイトが終わったら、レンタルビデオを2人で見る約束をしていた。先にバイトが終わった日向さんは、ビデオを借りに行き、ワインとつまみも用意した。

男性は22時までバイトだったため、最寄り駅には23時に着くはず。待ちきれない日向さんは、駅まで迎えに行った。当時はまだ携帯電話がない。30分ほど待ったが、一向に男性は帰ってこないため、日向さんは諦めてアパートに帰った。終電前にもう一度駅に行ったが、男性は降りてこなかった。

全く眠れなかった日向さんは翌朝6時ごろにカギが開く音に気付いた。玄関には見慣れない下品な柄物のシャツを着た男性が立っていた。

「後で分かったことですが、彼は私と出会う前に別の女性と同棲しており、その女性に追い出されたため、私の部屋に転がり込んできたのです。この日も会っていたのが元カノなのかはわかりませんが、とにかく女性と会っていたことは確かで、彼は私との約束をすっぽかし、一夜を共にした女性にもらったシャツを着て朝帰りしたのでした」

約束を反故にされ、浮気されたのだと確信した。日向さんは涙が止まらず、男性が着ていた柄シャツを切り裂き、「別れる! 出ていって!」と言ってバイトに出た。泣き腫らした目で仕事をしていると、バイト先の人から、「届け物だって」と声をかけられる。

「私、何も頼んでないです」と裏口へ行くと、「日向さんですね? こちら、お届け物です」と宅配便のスタッフが真っ赤なバラの花束を差し出した。

日向さんは再び泣いた。送り主は、朝帰りした男性だった。

日向さんは大学を卒業した後、1993年には同棲の男性とともにアメリカに留学。アメリカで2人は同じ大学に通った。やがて1996年に妊娠が分かると現地で結婚。日向さんはアメリカで息子を出産したとき、27歳になっていた。