川勝知事の「条件付き」リニア賛成

2019年6月5日、静岡市内で開かれた中部圏知事会議の席で、川勝知事は、期成同盟会会長の大村秀章・愛知県知事に静岡県の入会申請書を手渡すという突然の“怪挙”に出た。

入会申請書には、表向きは「リニア推進派」を公言してきた川勝知事だけに、リニアの意義を褒めたたえ、リニア整備実現のために沿線県として加入したいなどと記されていた。水環境問題は封印されていた。

ただ、現在と大きく違うのは、「リニアには賛成だが、静岡県にデメリットはあってもメリットはない。リニア建設での静岡県のメリットを示してほしい」などとストレートに地域振興策を求めていた点だ。

約800億円という各県の「中間駅」と同じ“メリット”を静岡県にも示すようメディア報道を使って何度も繰り返した。

つまり、川勝知事は期成同盟会へ入会を申請することで、「地域振興策」をJR東海に要請するわかりやすい行動に出たのだ。

JR東海は静岡県をあまりに甘く見ていた

しかし、JR東海は川勝知事の要請を完全に無視してしまう。

入会申請書を手渡した翌6日、東京都内で2019年総会が開催された。「早期開業を求める趣旨に賛同してくれるならば問題ない」と大村知事は述べたが、川勝知事の真意を測りかねて、静岡県の加入は棚上げされ、総会では協議されなかった。

総会で、JR東海の金子慎社長(当時)は静岡工区の未着工を懸念材料に挙げて、「2027年開業に影響を及ぼしかねない」などと不満を述べた。

また、金子社長は、川勝知事の要請する「地域振興策」に応えることはないとはっきりと否定した。JR東海は静岡県をあまりに甘く見ていたのだ。

今回、5月31日に開催された「期成同盟会」の2023年総会は、顔触れは変わったが、4年前の総会と発言内容等はそれほど変わらなかった。決議書に「静岡工区について早期着手を図ること」とそのまま盛り込まれたのも同じである。

逆に、せっかく出席した川勝知事への対応が全くできなかったことから、静岡工区の未着工問題は後退したのかもしれない。