抜け道はバヌアツ、超金持ちはシンガポールへ

抜け道がバヌアツ、アンティグア・バアブダ、セント・ルシア、モンテネグロ、グレナダ、マルタなどである。たとえばバヌアツは3000万円以上の不動産投資でパスポートが取得できる。現地で聞くと巧妙な手口があって、1500万円でも取得可能という。だからバヌアツの首都ポート・ビラの目抜き通りの商店街の80%以上が華人経営、中華レストランとホテルは中国人だらけだ。4年ほど前に私がジャーナリストの高山正之、福島香織らと滞在したときに見聞したことである。

こうした方法で外国籍を取得した中国人は2022年に1万800人。これらを含む対外投資による外貨流出は1500億ドルだった。

資産5000万ドル以上と推定される大金持ちが中国には3.2万人いる(クレディ・スイス、2022年8月調査)。加えてゼロコロナからフルコロナに政策変更の中国では2023年中に海外旅行外貨として2000億ドルが流れ出ると予測されている。表向き海外旅行は1人1年間で5万ドルに制限されているが、地下銀行の動きが活発になっている。

超金持ち中国人はシンガポールに住むのである。

シンガポールのスカイラインの空中写真
写真=iStock.com/Travel Wild
※写真はイメージです

ゼロコロナ政策に絶望した中国のZ世代

他方、ロックダウンで2カ月以上も閉じ込められていた中国の若者たちには、メンタルの落ち込みが顕著となった。

若い兵士を含む中国人のZ世代(1990年代半~2000年代生まれ)の海外移住願望は強く、日本に移住した数は一説に78万人とも言われている。

これは深刻な問題である。

雨後の筍のように中国各地に大学ができた。日本も大学が多いが、中国の即席大学はキャンパス整地が遅れ、泥道で、バスはこない。いや、そもそも簡単につくりすぎたのでまともな教授がいない。図書館には蔵書がない。実験室には器具が揃っていない。キャンパスの芝生は泥濘のまま。

雇用側にとって人気があるのは理工系である。文化系、とくに思想とか哲学専攻の学生などは敬遠される。そうした中国企業が景気後退、不況の荒波で新規雇用のゆとりをなくした。新卒者が欲しい企業は不動産販売だが、訪ねてくる学生はいない。中国の2023年の大学新卒は1158万人で、予測される新規雇用は600万人。