所得税と住民税の納税タイミングの違い

所得税と住民税の計算の流れはほぼ同じなのですが、納税のタイミングに差があることに注意が必要です。とくにサラリーマンの場合、所得税と住民税が天引きされるタイミングに大きなズレが出ます。

繰り返しになりますが、所得税は毎月の給料や賞与の金額に基づき、仮計算した税額が源泉徴収されます。そして、年末調整によって所得税の過不足を精算する形です。

一方、給与から天引きされる住民税については、仮計算ではなく確定した課税所得に応じて計算されます。そして、収入が発生した翌年6月以降の12カ月にわたって住民税の天引きが行われる形になります。

たとえば2022年分の給与所得にかかる税金を考えてみましょう。所得税については、2022年に支払われる給料や賞与から源泉徴収が行われます。そして、2022年分の所得にかかる住民税は、2023年6月から2024年5月に天引きされます。

このような所得税と住民税の納税時期の差は普段は気にならないと思いますが、就職したときと、退職したときには少し気をつけておいたほうがいいです。

就職した年は、所得税の源泉徴収は行われますが、住民税の天引きはありません。住民税が差し引かれるのは原則として就職した翌年の6月以降になりますから、1年目は住民税の天引きが行われないのです。そのため、場合によっては就職2年目の6月から手取り収入が少なくなるおそれがあります。

退職するときも、住民税の問題が出てきます。たとえば、2023年3月末に退職したとしましょう。この場合、2021年分の住民税の一部(2023年4~5月に天引きされるはずだった分)が未納状態なので、退職時に納める必要があります。

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また、2022年分の住民税は、本来であれば2023年6月~2024年5月に天引きされるはずでしたが、退職をすると天引きできないので、自ら納めることになります。

転職や独立などで、一時的に収入が減ったとしても、前職の収入に対する住民税を支払う必要があるので、気をつける必要があります。退職後の生活費や独立資金として使うつもりだったお金が、住民税でなくなってしまうこともあり得るからです。

退職を考えるときは、住民税の支払いがどれくらい必要なのかを確認しておくと安心です。毎年6月頃に届く住民税の通知書を保管しておいて、退職した後にどれくらいの住民税を納めることになるのかを把握しておきましょう。

※本稿は2023年2月時点の情報をもとにしています。

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