地方の百貨店は大型SCに客を奪われている

ではどうして中小型の地方・郊外百貨店は苦戦に陥ったのでしょうか。さまざまな理由が考えられますが、個人的には

1 売り場面積が狭い
2 駐車場が狭い
3 近隣の郊外型の大型ショッピングセンターに客を奪われた
4 近隣の大都市旗艦店へ行く

あたりが主な理由ではないかと考えています。

イオンモールに代表される地方・郊外型の大型ショッピングセンターが出現するまでは、中小型の地方・郊外百貨店は地方の消費者の有力な買い物先の1つでした。しかし、地方・郊外は電車・バスといった公共交通機関が整備された大都市圏とは異なり、移動手段は自家用車が主流になっています。

ショッピングセンターと駐車場
写真=iStock.com/Marcus Lindstrom
※写真はイメージです

大型ショッピングセンターのない時代はそれでも我慢して地方百貨店を使っている人が多かったのでしょうが、広い駐車場を完備した大型ショッピングセンターが出現してその便利さを体験してしまえば、わざわざ不便な百貨店に人が戻らないことは当然だと言えます。

また、大型ショッピングセンターの売り場面積は広大で数多くのテナントが入店します。地方・郊外百貨店は駐車場同様に売り場面積も狭いことから1フロア当たり数店舗くらいの出店しかありません。多くても7、8店舗くらいでしょう。大型ショッピングセンターの広大な売り場を見た後では、小さくみすぼらしく見えても不思議ではありません。

不便な地方百貨店よりも少し足を延ばして大型SCに行く

2012年に近鉄百貨店枚方店が閉店した後にリニューアルオープンした商業施設「枚方 T-SITE」を実際に見に行ったことがあります。近鉄枚方店だった建物の売り場面積は狭く、1フロア当たり3~4店舗くらいのテナント出店しかできません。売り場面積8万平方メートルの阪急百貨店うめだ本店や売り場面積10万平方メートルのあべのハルカス近鉄本店を見慣れている私にとって、枚方 T-SITEはひどく小さく狭く見えました。

そして電車やバス、自動車などで1時間弱で移動できる圏内に住んでいるなら、地元の小さい地方百貨店へ行くよりも都心旗艦百貨店へ行く人が多いとも考えられます。例えば今回閉店が決定した名鉄一宮店は、JRや名鉄の快速電車に乗れば約10~15分で名古屋駅に着きます。地元の小さな一宮店で買い物をするくらいなら、10~15分かけて名古屋市へ出てJR名古屋高島屋や少し離れた栄にある松坂屋、名古屋栄三越で買い物することを選ぶ人は多いでしょう。