ファッションブームが起こりづらくなった

さらに根本的な原因として「洋服に強い興味を持っている人が減った」ということを挙げたいと思います。

35年くらい前、ちょうどDCブランドブームで世の中が湧いていました。当時、私はファッションに全く興味のない高校生でしたが、友人がDCブランドのバーゲン目的に徹夜で並んだりしていましたし、ニュースでもその様子が報道されていました。その後もさまざまなファッションブームが次々と起きました。90年代半ばのビンテージジーンズブーム、90年代後半から2000年代前半の裏原宿ブーム、96年のアムラーブーム、90年代後半のマルキューブーム、2000年代半ばの欧米高級ジーンズブームなどが挙げられます。

しかし、特に2010年代半ば以降、開店前に長蛇の列ができるようなファッションブームはほとんど起きていません。強いて挙げるとすると2020年秋にユニクロがジル・サンダーとのコラボライン「+J」を復活させた時くらいでしょうか。

しかし、その代わりに2020年以降は、ガンダムのプラモデル、ポケモンカード、トミーのミニカーなどに長蛇の列ができるようになりました。転売屋の買い占めによる品不足も手伝っていたとはいえ、人気の高まりは感じられました。

その一方で、ファッション関連商品で転売屋に高値で取引されたのは、ナイキのレア物スニーカー程度なので、人々の興味が洋服・ファッションから移ったと感じられます。また、私は長らく衣料品業界で暮らしているのですが、衣料品業界の知り合いでもファッション関連品よりもキャンプ用品や釣り具、音楽などに支出する人が多くなっています。

百貨店の売り上げトップは衣料品から食品へ

実際に百貨店でも売り上げ構成の1位は衣料品ではなく、食品になっていますので、百貨店客層で衣料品に対する興味は着実に低下していると考えられます。

百貨店で存在感を増す『身の回り品』とは何か」(WWD JAPAN、2023年5月2日)

百貨店の売り上げ構成比が変化している。日本百貨店協会の2022年の統計によると、百貨店の売り上げ構成の1位は「食料品」の29.0%、2位が「衣料品」の26.6%、3位が「雑貨」の19.7%、4位が「身の回り品」の15.3%となる。百貨店では売り場面積が大きい「衣料品」が2000年頃まで40%以上のシェアを誇ってダントツの存在だったが、「ユニクロ」に代表されるSPA(製造小売業)の台頭やショッピングセンターとの競合激化でじわじわと衰退。コロナ下の20年に初めて「食料品」に1位の座を明け渡し、行動規制がだいぶ緩和された22年も1位の座を取り返すことはできなかった。

とあります。

店頭のプラスチック容器に入った総菜
写真=iStock.com/sergeyryzhov
※写真はイメージです

コロナ禍が人々の外出機会を奪ったことで、衣料品の需要が低下したことは否めませんが、行動制限が緩和されても衣料品のシェア率は元には戻らなかったわけです。