大規模になればなるほど殺処分する鶏の数は増える

鳥インフルエンザのウイルスは、渡り鳥によって国内に持ち込まれる。ニワトリへの媒介はカラスやネズミといった野生動物が担っている可能性が指摘されている。

被害は年によって波があるものの、拡大基調にある。従来は冬に感染が多発し、春には収束してきた。しかし、昨シーズンは5月中旬まで発生が続き、今シーズンは最速の10月28日に1例目が確認されるなど、期間が長くなっている。環境中のウイルス濃度が高まっているとみられ、被害が拡大しやすい素地がある。

5月6日の時点で、今シーズンの殺処分数は約1771万羽。その内訳を示す棒グラフは、被害の偏りを端的に示す。26道県での鶏舎などにおける鳥インフルエンザの発生数84件のうち、50万羽以上を飼うわずか10件の大規模農場だけで、殺処分数の過半を占めているのだ。

【図表1】用途別及び規模別の発生事例数及び殺処分羽数
農水省動物衛生課「HPAI発生農場の疫学調査概要について」2023年4月20日

「経営の強み」が途端に弱点に

鳥インフルエンザは1羽でも発病すると、農場内のすべての家禽かきんを殺処分するため、規模が大きいほど被害も大きくなる。

養鶏場の規模は大きくなる流れにあり、鳥インフルエンザの1農場当たりの殺処分数も増えている。今シーズンは100万羽を超える殺処分が5件も起きた。北海道大学大学院農学研究院研究員の大森隆さんは「大規模経営は突然の疾病発生などに見舞われると、経営上の強みであるはずの規模が逆に最大の欠点へと急転します」と解説する。

国内では窓がなく環境をコントロールできる「ウインドウレス鶏舎」が防疫に役立つと考えられてきた。広い敷地にウインドウレス鶏舎の立ち並ぶ近代的な養鶏場こそが、効率的な経営を可能にすると信じられてきたのだが、そうした鶏舎でも鳥インフルエンザは発生している。