中古で起きているのは急伸した価格の調整

そんな中、中古は需給バランスを反映して価格調整が行われているが、新築はなぜ未曽有の価格での大量契約が実現するのか。中古が1戸1戸の現物の早い者勝ちの取引なのに対して、新築の売り方は来場した顧客を数カ月溜めて、期分けして販売し、その入居次期はかなり先になる。つまり、新築では巣ごもり特需が減退する前の顧客を含めてまだ滞留している状態にある。その意味で、中古は新築の売れ行きの先行指標と言える。こうして、中古では下火の売れ行きが新築ではまだ残っているのだ。

それでは、今後はどうなるのか。中古で調整局面になっているが、これは需給ひっ迫での価格の急伸の調整と私はとらえている。その調整が済めば、またこれまで同様に価格上昇が続くと考えている。なぜなら、不動産価格は金融緩和で上昇し、金融引き締めで下落するからだ。その金融政策は4月に就任した植田和男日銀総裁がキーパーソンになる。前任の黒田東彦さんの金融緩和政策を継続すると4月28日に日銀の決定会合で発表している。この金融緩和で貸出資金は担保が取れるがゆえに貸しやすい不動産に向かう。これは過去漏れなく起こってきたことだ。このため、不動産購入には資金が付きやすいゆえに、借入金(ローン)が増え、その分資産(不動産価格)が上昇するのだ。

記者会見する日銀の植田和男総裁
写真=時事通信フォト
金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁=2023年4月28日、日銀本店

変動金利が上がる心配は無用

世界的にはインフレ対策としてほとんどの先進国で金融の引き締めが行われ、長期金利が上昇した。これに対して日本では真逆の金融緩和が継続され、円安を招いた。日本でも長期金利はやや上昇したので、住宅ローンの長期固定金利も同様に上昇した。しかし、住宅購入者の8割以上が利用している変動金利は上昇していない。

短期金利と長期金利は決定のメカニズムが違う。変動金利は、「短期プライムレート」(短プラ)を基準にして利率の見直しを行っている。短期プライムレートとは、業績面で好調な優良企業に適用する最も優遇された金利(プライムレート/最優遇貸出金利)のうち、1年以内の短期間で貸し出す際の金利のことであり、内部留保が進んだ大企業が多い日本では短プラを上げる余地はほぼ無い。だからこそ、金利が上がる心配など無用なのだ。