立憲民主党に足りないファイティングスピリット

立憲で「戦う政治家」というと、最高顧問の菅直人元首相が思い浮かぶ。菅氏も昨夏の参院選で、党が戦意を喪失しかけていた大阪において、自ら「特命担当」を買って出て、候補擁立に成功した。結果的に大敗したが、少なくとも「不戦敗」を免れた。当時菅氏はこう語っていた。

「相手の本拠地で戦わないと、こちらは攻められっ放しになる。けんかは攻めなければ意味がない」

有田氏は71歳、菅氏は76歳。この世代のファイティングスピリットは本当に侮りがたい。そして、後に続く世代に今なお不足しているのは、こういう姿勢だと筆者は思う。

幸い、立憲の「地力」は少しずつ付いてきている。今回、5補選と同時期に行われた統一地方選において、立憲は道府県議選から市町村議選まで、軒並み議席を増やした。地域的にばらつきはあるものの、衆院小選挙区の議席数が多い首都圏で大きく伸ばしているのは、今後への好材料だ。

統一補選の結果は目立つ一方、国会の構成という意味ではさほど大きな意味を持たないが、統一地方選の結果は、党の基礎体力に直結する。その意味で、統一地方選で堅調だったことは、立憲にとって大きな意味があった。

「敵前逃亡」を続ける野党第1党に存在意義などない

もっとも、単に地力を付けただけでは意味がない。「勝ち切る」だけの力を得なければならない。

現在、維新が「強い野党」であるかのように認識されているのは、目立つ選挙で実際に「勝った」さまを見せているからだ。少なくともこの点において、立憲は維新に後れを取っている。

前半戦の北海道知事選のように、野党が強い地域での首長選を取りこぼすようなことは、本来許されない。あそこで勝っていれば、前半戦で維新が勝った奈良県知事選だけに大きく焦点が当たることは避けられた。「維新勝ち」だけが強調されることもなかった。

こういう「印象づけ」まで考えた上での選挙戦略が不可欠なのに、立憲はこの点が決定的に甘い。

「実際に勝つ」ことと同時に大切なのは、前述した山口4区のように「勝てないと分かっていても選挙に持ち込む」ことだ。まさに有田氏のキャッチフレーズだった「黙せず戦う」ことである。相手が手強いからといって不戦敗ばかり決め込んでいては、いつまで待っても地力は付かないだろう。

朝日新聞の世論調査によれば「政権交代が繰り返される方が良い」との回答が54%を占め、増加傾向にあるという。こうした声を受け止め、形につなげることが、野党第1党たる立憲民主党の使命である。立憲が衆院千葉5区補選で、なぜ他の野党候補から頭一つ抜け出したのか、その意味を考えるべきだ。

「保守王国で勝てないから」とか「他の野党との調整が必要だから」とか適当な理由をつけて、戦うことを避け「政権の選択肢を示す」ことから逃げてしまうなら、野党第1党の存在意義などないことを肝に銘じてほしい。

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