スマホを見ながらの子育ては子供にどのような影響を与えるのか。東北大学の川島隆太教授は「親がスマホの画面ばかりに目を向け、子供と目線が合わないと子供は不安を覚える。その結果、イライラや抑うつなどの感情障害を引き起こす」という――。

※本稿は、川島隆太『スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

スマートフォンに夢中の母親
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子どもの脳はスマホの悪影響を受けやすい

私が、もっとも心配しているのは、子どもたちの脳です。大人に比べて子どもの脳はまだ脆弱であるため、デジタル機器の使用による悪影響を受けやすいであろうと思っています。

先ほどから述べているとおり、スマホを使用すると、脳の知的中枢である前頭前野の活動が抑制されます。前頭前野が働かなければ、思考やコミュニケーションといった人間らしい能力は身につきません。前頭前野は、感覚、視野、運動にかかわる他の脳の部位よりゆっくり発達することがわかっています。そのため、生まれてから青年期までの経験や生活習慣によって発達に影響が出やすくなります。

その脳の成長にいちばん大事な時期に、子どもにスマホをポイッと与えてしまう。

その危険性について改めてお話ししたいと思います。

他人の感情を理解できない子どもに育つ

多くの人は、「有害なコンテンツを見せなければ大丈夫なのでは?」「ジブリやディズニーのアニメなら子どもが見ても安心」などと安易に考えているかもしれません。

しかし、事態はみなさんの想像以上に深刻です。

赤ちゃんを泣きやませるとか、幼児をおとなしくさせるためにスマホやタブレットを渡してしまう親がいますが、あれは絶対にやめるべきです。

理由ははっきりわかっていませんが、小さな子どもは、すぐにスマホに夢中になります。恐ろしいことに0歳児でも、iPhoneやiPadに興味を持ち、画面をスワイプして遊びだしたりするのです。

こうした、生まれたときからデジタル機器が生活のなかにある世代の子どもたちには、あきらかな異変が起こり始めています。

というのも、近年小・中学校の児童生徒のなかに、自分の感情をうまく表現できず、他人の感情もうまく理解できないという子どもたちが急増しているのです。