ショッピングセンターやインフラ施設も標的に

ロシアの独立系メディア「Verstka」(2022年12月29日)によれば、プーチン政権が昨年2月にウクライナ侵攻を開始した後、昨年末までにロシア各地の軍事施設の少なくとも72カ所で爆発があった。徴兵事務所で44件、軍事基地で28件という。徴兵事務所の爆破は、プーチン政権が昨年9月に導入した部分的動員令への反発といわれる。

ショッピングセンターやインフラ施設でも、20件以上の爆発が起きたとされる。

今年に入っても謎の爆発が続発している。4月1日、ウクライナに近いベルゴロドの変電所が爆発、炎上した。4月15日には、中部カザンの戦車訓練施設で大爆発と火災が起きた。当局は詳細を公表していないが、地元住民らがSNSで爆発の動画を伝えた。

3月5日にはウクライナに近いブリャンスク州で監視塔2カ所がドローンで破壊され、航空機や燃料タンクが損傷した。反プーチン組織「ロシア義勇軍団」が犯行声明を出し、隊員40人が作戦を実行したと伝えた。

ウクライナ侵攻を進める南部軍管区の拠点、ロストフナドヌーでは3月16日、FSBの建物が爆破され、4人が死傷した。この事件では、「黒い橋」と名乗る正体不明の組織が犯行声明を出した。

このほか、「自由ロシア軍団」もロシア国内で放火などの破壊活動を組織したとしている。

ウクライナに投降し、反プーチンに転向したロシア兵も

プーチン政権は一連の爆破事件をウクライナ側によるテロだとしている。プーチン大統領は2月28日、FSB本部で演説し、「キエフの政権はテロの手法でロシアの弱体化を図っており、テロリストが国境を越えて潜入している」とし、国境警備や治安対策の強化を指示した。

しかし、犯行を名乗り出た「国民共和国軍」、「ロシア義勇軍団」、「自由ロシア軍団」などはロシア人中心の組織のようだ。

「国民共和国軍」は昨年8月にモスクワ郊外で起きた右派思想家ドゥーギン氏の娘の爆殺事件でも関与を主張したが、その正体は不明だ。

「ロシア義勇軍団」の創始者はドイツ育ちのロシア人で、格闘技イベントを主催してきたデニス・カプースチンとドイツのメディアが報じた。極右思想を標榜し、プーチン政権打倒を掲げているという。

「ニューズウィーク日本版」(3月22日)によると、「黒い橋」は「反戦を掲げるロシアのレジスタンス運動」で、「暴力的な抵抗によるプーチン政権の破壊」を最終目標に掲げるという。

「自由ロシア軍団」は、ウクライナ軍に投降し、反プーチンに転向したロシア軍将兵ら約500人で結成。ウクライナ軍と共にロシア軍と戦い、一部がロシア領内で破壊活動を行っているとされる。ロシア最高裁は今年3月、軍団をテロ組織に認定した。