カウンセリングでストレスとの付き合い方を学ぶ

そして、カウンセリングの目的は、再発防止です。単に話を聞いてもらってすっきりするというだけなく、ストレスとの付き合い方を学びます。

適応障害になる人は、責任感が強く真面目で几帳面、何ごとも「ゼロか100か」で考えてしまう、悩み事を一人で抱え込みやすく、何でも自分の力で乗り越えないといけないと思っている、といった傾向があります。「自分がやらないといけない」「目標は必ず達成しないといけない」「周りに迷惑をかけてはいけない」……。こういった「ねばならない」思考が横たわっていることが多いのです。

どんな職場でも、ストレスというのはありますし、避けることはできません。ですから、こうした傾向を持つ人は、環境が変わっても、なんとか適応しようと食らいついてストレスを抱え込んで心身に不調をきたす恐れがあります。カウンセリングによって、ものごとの捉え方や考え方を変え、受け取るストレスを緩和できるようにしていきます。

リモートワークによる適応障害も増えている

リモートワークが、適応障害の引き金になったり、症状の悪化を早めることも増えています。ほかの同僚の様子が見えない分、「みんな自分より頑張っているのだろう」と思い込んで仕事やストレスを一人で抱え込み、弱音も吐きにくくなってしまいます。また、通勤がないため出勤・退勤の線引きがはっきりせず、プライベートとの境目があいまいになり、仕事量が増えて苦しくなっているというケースもよく聞きます。

先に述べた通り、適応障害は早期発見、早期治療が重要ですが、オンラインだと特に、本人も周りも兆候を見逃しやすいのです。

出勤していれば、「最近、遅刻ギリギリに会社に来ている」「疲れた顔をしている」「パフォーマンスが下がっている」などの様子に周りも気づきますが、リモートだとなかなかわかりません。また、本人も調子が悪いことは隠そうとするので、病状が悪化するまで表面化しにくいのです。

働き方の選択肢が増えるのは良いことですが、こういったネガティブな面があることは考慮してほしいと思います。例えば1カ月か2週間に1回は、チームのメンバーが対面で顔を合わせる機会を設けましょう。オンラインでは雑談がしにくく、打ち合わせをしても目的以外の会話はなかなかできないものです。対面の方が、自分のちょっとした体調の変化や仕事の大変さについても話しやすいですし、「ちょっとつらいな」と思っても、次に会う約束があれば「その時に相談してみよう」と思えて安心感につながります。

リビングルームで、ノートパソコンを前に頭を抱えている女性
写真=iStock.com/RRice1981
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