何気ないひとことで、人間関係がうまくいかなくなることがある。上手な会話と失敗する会話は何が違うのか。韓国人作家の著書より、家庭や職場での会話で気を付けるべきポイントを紹介する――。

※本稿は、キム・ボムジュン著、朝田ゆう訳『「また会いたい」と思われる人は話し方が違う』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

父、母、子供
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

叱られた子どもは「はい」と返したが…

ある日の夕方、妻と子どもが話をしていた。

「宿題したの?」
「まだ」
「帰ってきたらすぐに遊んでたけど、それで試験がうまくいくと思うの?」
「……」
「しっかり勉強しなさい。わかった?」
「はい」

会話の目的とは、相手から自分が望むものを得ることだ。だが、妻はこの会話で何を得たのだろう? 子どものほうは何を学んだのだろう?

結局、妻には何も得たものがなく、子どもも何も学んでいない。子どもには母親に叱られたという記憶しか残らない。母親は子どもが「はい」と言ったので今度こそ勉強すると思ったが、実際にはそうはならない。

上手に会話するために必要なことはなんだろう? 会話をうまく運ぶには心理学を勉強しなければならないのだろうか? いや、私たちに必要なのは、すぐ実行に移せる簡単な方法だ。まず第一に、相手の答えを自分が期待していたように解釈するのではなく、相手の話し方から正しく聞きとることだ!

誰にもメリットがない会話は失敗

先ほどの例をもう一度読んでみよう。妻は子どもの「はい」を肯定の返事として受け止めた。だが、実際はどうだろう?

子どもの「はい」は、気を引き締めて熱心に勉強しますという意味ではない。叱られている状況を抜け出すための返事にすぎない。もちろん母親が怒っているので、子どもは部屋に入って勉強するふりはするだろう。だが、嫌々勉強した結果は? 妻の期待を裏切る成績になるに違いない。

つまり、妻と子どもの会話は失敗したということだ。どちらにとってもなんのメリットもない会話だったというわけだ。では、職場ではどうだろう?

「必ず明日までに報告書を作成すること。残業してでもなんでも、完成させておくように」

退勤時間の間際に、上司が突然そんな指示を出した。部下たちは何も言えずに、「はい」と答える。はたして上司が期待したとおりの報告書はできるのだろうか?