ユーザーに最適化したデジタル・クーポン

効果を発揮したもう1つのプロモーションは、ユーザー1人1人に最適化したデジタル・クーポンだ。例えば、よく利用してくれるが、固定メニューだけで、新メニューには手を出してくれないユーザーには、新メニューを大幅に割引するクーポン。よくセットメニューを購入してくれるユーザーには、セットにもう1品追加する商品の割引クーポン。利用をやめてしまったユーザーには、以前に購入していた商品の割引クーポン。まるで行きつけの店が常連さんに特別なサービスをしてくれる感覚で、「個別対応」のクーポンを専用アプリで届けることで、ユーザーを掴んで放さなかった。

こうした各種取り組みによって順調にV字回復を進めた日本マクドナルドは、コロナ禍という未曽有の危機をチャンスに変えることで、「信頼できるブランド」として飛躍し、さらに業績を伸ばすことに成功した。

芝生の上に座りスマホを使用している女性
写真=iStock.com/Oleksii Didok
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コロナ禍のニーズにいち早く対応

もともとマクドナルドは店舗内で飲食してもらう体験価値を重視していたが、コロナ禍で対人接触を避けて「安心で便利な外食サービス」を望む新しいニーズが生まれると、いち早く新ニーズを満たすサービスを提供していった。

レジに並ぶことなくスマホで注文・決済できるモバイルオーダー、対人接触を抑えてテイクアウトできるドライブスルー、自宅で受け取れるデリバリー、駐車場で受け取れる「パーク&ゴー」など、安心・便利にマクドナルドを利用できる選択肢を豊富に提供することで、幅広いユーザーの信頼を獲得した。

コロナ禍でオフィス街の来店客数は減少したが、それを補って余りあるほど、郊外や住宅街のファミリー層を中心としたまとめ買いが伸びて、増収増益を実現させた。外食産業全体が危機を迎えた中、日本マクドナルドは「1人勝ち」と言われるほどの驚異的な成果をあげることに成功した。