イヤホンで自分の世界に入るなんてもったいない
「ランナー世論調査2016」(アールビーズ調べ)によると、「レースでの走行時に音楽を聴きますか?」という質問に約30%が「毎回聴く」、約8%が「時々聴く」と回答。相当数の“イヤホンランナー”が存在していると想像できる。
安全面や周囲のランナーに迷惑をかけないためにも、イヤホンランナーは十分な配慮が必要になるだろう。
東京都生活文化スポーツ局の調査によると、イヤホンを使って70デシベル程度で音楽を聴くと、周囲の音に対する聴覚感度は30デシベル以上も低下する。挿入型など遮音性の高いイヤホンでは最大65デシベルも低下したという。ランニング時は着地音などもあるため、音楽のボリュームは大きくなりがち。遮音性の高いイヤホンの場合、かなり大きな音でも聞こえないことがあるだろう。
しかも1万人を超えるような大規模レースでは大半が混雑している。イヤホンを装着していると、後ろから迫ってくるランナーに気づきにくく、知らないうちに他のランナーに迷惑をかけていることがある。
筆者が、ブラインドランナー(視覚障害者ランナー)の伴走をしていたときはイヤホンランナーが非常に迷惑だと感じた。ブラインドランナーやガイドランナーは横並びで走るため、ひとりで走るときの約3倍の幅が必要になる。前の選手を追い抜くときは声をかけることもあるが、その声が届かない場合は、ペースを緩めて、通れる幅になるまで待たないといけない。
そもそもイヤホンを装着することで、外部の音を遮断してしまうのはもったいない。給水スタッフや沿道の観衆の声援が聞こえないからだ。応援から元気をもらうこともあるし、声をからして応援してくれる人たちの気持ちを考えたら、イヤホンをしないほうがいいだろう。
また大会によってはゴール付近で音楽を流すことや、ゼッケンナンバーをアナウンスすることもある。そういう大会の一体感もぜひ楽しんでいただきたい。