予算を増やした日韓は出生率が下がっている

大きく①予算増かつ出生増、②予算増だが出生減、③予算減だが出生増、④予算減かつ出生減――という4象限に分けられますが、①は38カ国中たった4カ国のみ。一方で、多いのは、②の15カ国。つまり「予算は増やしたものの、出生率はかえって下がった」国が約4割を占めています。日本や韓国もここに含まれます。ここの予算を増大したところで、それが直接的に出生増にはつながらないというのはそういうことです。

【図表1】家族関係社会支出GDP比と出生率増減(2000-2019年比較)

OECD諸国全体で見れば、その55%が予算を増やしましたが、出生率が増えた国はわずか26%に過ぎません。

むしろ「見習うべき」といわれているフランス、デンマーク、フィンランドなどは④のグループに属します。つまり、10年前と比較すれば予算も出生も減っています。しかし、これは予算減のせいで出生率が減ったわけではなく、この予算の増減とは関係なく出生率が減るというステージに入っていることを意味します。相関図内にて青色バブルで示したものは、OECD平均より予算の多い国々ですが、ご覧の通り、予算の多い国々のほとんどが出生減です。

先進諸国全体で「少母化」が進んでいる

出生数が減る理由は、家族関連予算の問題ではありません。まず、医療や公衆衛生の発達により乳児死亡率が減り、生まれた子の死亡数が減れば、その分だけ母親は新たな出産をしなくなります。逆にいえば、出生数が多い国というのは、それだけ赤ちゃんが死んでしまう国であることを意味します。先進諸国の出生率が軒並み2.0以下になるのはその結果です。

加えて、出産対象年齢の女性の絶対人口の減少があります。出生率が右肩下がりになるということは、今の子供の数が減るというだけではなく、20~30年後に出産する女性の人口も減るということです。日本では本来90年代後半に起きるはずの第3次ベビーブームが起きなかった時点で、今後出生数が増えることはないと決定されたようなものです。

私が、「少子化ではなく少母化」であると繰り返し述べているのは出産対象年齢の女性人口の減少によるものですが、この「少母化」は日本に限らず、出生率が下がっている先進諸国全体に共通します。

「少母化」は一世代前の出生数の減少を起点としますが、それでも生まれてきた少ない子供たちが結婚やパートナーを得て出産する流れになれば、まだその減少幅は小さい。しかし、未婚化や婚姻数減少と重なると低出生状態は加速します。