人間の保育士と同程度の役割をこなす

ソータはリアルタイム音声変換で、オペレーターの声をかわいいロボットにふさわしい声に変える。さらに音声認識によるロボット動作生成などの最新技術を組み合わせて、オペレーターは話すだけで、ソータの基本的な動きを操作することが可能となっている。その結果、高齢者がアバターを通して行ったあいさつ運動では、12日間でアバターが245回の声掛けをしたのに対し、子どもたちから62%の割合で返答があった。

園長に対するヒアリングでは「人間の保育士と同程度の役割をこなすことができた」との回答が寄せられた。劇団員らは遠隔から約30分のアクティビティを四回行ったが、子どもたちはみなアバターの声に耳を傾け、質問に元気よく答えていた。

劇団員は「人に無条件で肯定される体験として、生活をうるおす貴重な体験であると感じました」と話し、オペレーターにとっても貴重な体験となったことがうかがわれた。

保護者に対する聞き取りでも「初めてロボットと触れ合いましたが、自分から積極的に関わっていました」「またソータくんに会いたいと言っていました」など、好意的な評価だった。実験の結果、特殊なスキルがなくても、あいさつ運動をサポートできることが示された。

アバターがスーパーでチラシ配り

続いてスーパーマーケットでは、アバターによる販売促進の実現可能性を1週間、検証した。スーパーなどの小売店では新型コロナウイルスの感染防止を目的に、接客や販売促進の手段が制限されている。アバターによる接客なら、感染リスクはない。

遠隔操作型女性アンドロイドジェミノイドF。
写真提供=ATR
遠隔操作型女性アンドロイドジェミノイドF。

しかし「購買の促進」は、難易度が高いという課題があった。実験では1日あたり9時間にわたり2台のアバターを使い、20代から50代までのべ36人が操作を担当した。結果はというと、店員が配布するより約五倍のチラシを配布することができた。また時間にして45%にわたり、客が立ち止まってアバターと会話をしており、約半分の時間で利用されていたことが確認された。

一方で買い上げ率は、人間の店員が販売員をした場合に比べて42%にとどまり、売り上げの向上にはつながらなかった。利用客に対するヒアリングでは「楽しく会話できた」「ロボットのインパクトが強すぎて、商品が目に入らなかった」などの回答が多く、アバターを商品の売り上げにいかにつなげるかが今後の課題となった。