「2周遅れ」の日本の天然ガス・パイプライン網

そこに降って湧いたように起こったのが、シェールガス革命である。Cheniere社は、ビジネスモデルを180度転換し、LNG輸入よりLNG輸出に事業の重心を置くことになった。FERC(連邦エネルギー規制委員会)の許可が下り次第、4系列の年産1500万トンのガス冷却設備を建設し、LNG輸出を開始する予定であり、すでにイギリスのBGグループ、スペインのFenosa社、インドのGAIL社、韓国のKOGAS社と、LNG供給の長期契約を締結した。

フォートワース市内の居住地域に立地するシェールガス田と、人里離れた海辺の湿地帯(実際に敷地内で野生のワニを目撃した)に立地するサビンパス基地とでは、たたずまいを完全に異にする。しかし、それぞれの現場で活躍するベンチャー企業と独立系企業が発しているダイナミズムには、大いに共通性がある。このダイナミズムこそ、シェールガス革命を現実化した原動力であり、日本のエネルギー産業が長いあいだ忘れてしまっていたものではなかろうか。

日本のエネルギー産業のあり方をめぐっては、昨年の東京電力・福島第一原子力発電所の事故を契機として、それを根本的に見直す作業が続いている。全体として脱原子力依存の方向性が打ち出されることは間違いないが、代替エネルギーをいかに確保するかについてはコンセンサスが形成されていない。それでも、使い勝手がいい化石燃料のなかでCO2(二酸化炭素)排出量が相対的に少ない天然ガスに期待する声は高い。ただし、ここに一つの大きな問題がある。それは、シェールガス革命の結果、アメリカ市場での天然ガス価格が劇的に下がっているのに対して、日本市場における天然ガス価格は高止まりしたままだという問題である。

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図1 LNG、天然ガスマーケットの動向

ここで図1を見ていただきたい。この図が示すように、シェールガス革命の影響でアメリカでの天然ガス価格は低落を続け、最近ではmmBTU(100万英国燃料単位)あたり2ドルを割り込んだ。一方、日本での天然ガス価格は東日本大震災(福島第一原発事故)後急騰し、最近ではついにmmBTUあたり18ドルを突破した。なんと9倍もの価格差が存在するのである。