2012年7月19日(木)

「ネット時代で半歩先いく」マーケティング分析入門 (第1回)

2次データの制約でつくるレポート

PRESIDENT Online スペシャル

首都大学東京准教授 水越康介=文
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首都大学東京准教授 水越康介(みずこし・こうすけ)●1978年、兵庫県生まれ。2000年神戸大学経営学部卒、05年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。首都大学東京研究員を経て、07年より現職。専門はマーケティング論、消費者行動論。主な著書として、『企業と市場と観察者』『Q&A マーケティングの基本50』『『仮想経験のデザイン』(共著)『マーケティングをつかむ』(共著)など。

レポート作成で大変なのは「データ探し」

社会生活の中で、何かのレポートを書くという機会は多い。大学生活であれば毎週のように宿題がでているかもしれないし、社会人になれば、いろいろと分析や企画書、稟議を書かなければならない。論文を書かねばならないという人もいるだろう。

この手の方法についてはたくさんの本もでているが、例えば『論文の教室』(戸田山和久、NHKブックス)はとても面白くわかりやすい。特に論文とは、「型にはまった」文章であり、書き方には一種の決まりがあることがわかる。型を知らない方は、先ずはこの辺りから始めるのが良いだろう(言うまでもないが、だからといって論文は難しく書くべしというのは誤解であり、ここでいう型とは要件や展開の仕方を指す)。

『論文の教室』
戸田山和久著/日本放送出版協会(NHKブックス)/本体価格1120円



一歩進んで、レポート作成で実際に大変な作業になるのは、論証のためのデータを探すという手間である。以下では、そうしたデータ探しの方法を紹介しておこうと思う。逆に、もっと進んでより詳しく学びたいという人には、『マーケティング・リサーチの理論と実践:理論編』(ナレシュ・K・マルホトラ、同文館)、もう少しやさしめでということであれば、『1からのマーケティング分析』(恩蔵直人・冨田健司、碩学舎)を紹介しておこう。どちらも、データをいかに集めるのかはもとより、データを具体的にどうやって分析するのかを知ることができる。特に数値データについては、分析は統計的に進める方法が分かる。

『マーケティング・リサーチの理論と実践:理論編』
ナレシュ・K. マルホトラ 著 小林 和夫 監訳 日本マーケティングリサーチ協会 監修/同友館/本体価格9000円



『1からのマーケティング分析』
恩蔵 直人、冨田 健司 著/碩学舎/本体価格2400円


 

今回紹介しようと思っていたのは、その一歩前である。論文の型はなんとなくでもわかっている。統計的に分析するまで詳細にやりたいわけではない。目的に沿ったデータをどうやって集めればよいのか。

いずれの本でも学べるが、基本的に、僕たちが集められるデータには1次データと2次データがある。1次データとは、情報を持つ当事者にアプローチして得られる生の情報であり、最も価値があると考えられている。一方で、2次データとは、1次データを何らかの形で加工したデータであり、データの価値としては1次データに劣ると考えられている。

例えば、ある成功を収めた企業家がいるとして、彼に直接インタビューしてまとめられた資料は1次データに当たったということになる。さらに、他の誰かがこの資料を読んで別に新しいレポートを作ったとすれば、この人は2次データをベースにレポートを作成したとされ、できることならば、1次データにあたれた方が良かったね、といわれる。

アンケート調査の場合も同様である。サンプルを自ら抽出して行われたアンケート調査は当然1次データに当たったといわれ、そのアンケート結果は集計されて資料になる。そしてこの集計された資料にあたって別途レポートが書かれたとすれば、それは2次データを元にして書かれたといわれることになる。

なるほど、1次データに価値があることはわかるが、同時に、1次データへのアクセスはなかなか難しいこともわかる。当事者にあってヒアリングすることは関係者でもない限り容易ではないし、場合によっては、すでにその人が亡くなってしまっていたり、あるいは覚えていないということもありうる。

仮にヒアリングできるという場合でも、そこまで時間をかけている余裕はないということもあるだろう。多くの人々にとって大事なことは、1次データに当たるということではなく、限られた時間の中で与えられた問題を解くということなのである。2次データでも問題が解けてしまう場合は決して少なくないはずだ。

さて、実際問題として、2次データでどこまでレポートは書けるのだろうか。もう少しいえば、限られた時間という制約のもとで、どのくらいの議論ができるだろうか。

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