紙資料という「宝の山」を見逃さない

・本の価値

ネットだけが情報源ではない。むしろ、誰もがネットにアクセスし、同じように調べられるようになった今日では、ネットにある情報の価値はそうじて低い。誰もが知っている情報(知ることができる情報)には、あまり希少性がないというわけである。

ネット上にない情報は、例えば、昔ながらの紙の本にある。ネット時代になり、本が不要になりつつあると思っている人々も多いだろうが、もしかすると事態は逆かもしれない。みんながネットにアクセスして同じ情報を手に入れられることになるとすれば、差別化のための情報はネットから遮断された紙の本にあることになるわけだ。電子書籍化も進んでいるが、一括検索のためにはもう少し時間とコストが必要そうである。

もちろん、本を探すといっても、そのためには今ではネットを活用できる。ネットでタイトルやキーワードを押さえておき、その上で実物にあたるというわけである。関連した本を見つけることができれば、あとはネットで探した学術論文と同じである。参考文献をたどっていけば、だいたい探している情報にいき当たるはずだ。本の情報を探すことができるようになれば、一気にネット時代の先をいける。

紙の現物は、多くの場合図書館に行けば手に入れられる。ただ、地方の公立図書館では目的の書籍を見つけられないこともある。その場合には国会図書館が利用できる。国会図書館は多分限られた人しか利用しない変わった図書館だが、日本で刊行されたすべての書籍をみることができる。手続きが通常の図書館とは違うために戸惑うところもあるが、係の人に聞けば大丈夫である。裏技的に思うかもしれないが、図書館にはリファレンスサービスが用意されており、電話で関係する資料を探してもらうこともできる。また、ネット登録さえしておけば、必要個所をコピーして郵送してくれる有料サービスもある。

国会図書館では、書籍だけではなく雑誌についても検索やコピーができる。ネットのNDL-OPACを利用すれば、無料で雑誌記事のタイトルまではあたれる。めぼしいものが見つかったらコピーを申請すればよい。

→国立国会図書館 蔵書検索・申込システム
https://ndlopac.ndl.go.jp/

国会図書館においてないような雑誌もある。一方で、そういう雑誌ばかりを集めたところもある。よく知られているのは、大宅壮一文庫である。こちらはネットでも確認できるが、膨大な雑誌をコレクションしており、情報の宝庫である。

→大宅壮一文庫
http://www.oya-bunko.or.jp/
・雑誌・新聞

とはいえ、雑誌の最新記事は、インターネット上に同じ情報が掲載されるようになってきた。これは新聞も同じで、いよいよ紙媒体の意義が薄れてきており、あえて調べるという希少性は薄くなっているかもしれない。それでも、過去のものに遡ってというとそう簡単には調べられない。ここでは昔の資料が生きてくる。鮮度よりも、古さに意味があるのだ。

昔の資料というと、そもそももう役に立たないと思っている方がいるかもしれない。これは致命的な誤解である。よく、大事なのは過去ではなく未来のことだという人がいる。これは正しいと思う。過去を見ても未来のことはわからないとも言う。これは正しいともいえるが、少し怪しい。さらに、過去を見ても未来のことは分からないから見なくてということになると、これは論理的に飛躍している。まず、未来が大事なことはいうまでもないが、未来のことは、今存在しない以上、どうやっても分からない。それは過去に特有の問題ではない。何を見ようが(水晶玉のようなものを除けば)、未来のことはわからないのである。

僕たちは、それでも存在しない未来を考えねばならない。レポートや論文を書くのもそのためだろう。その際、僕たちが少しでも頼ることができる知識は、逆に過去のものしかないと思った方が良い。過去を手がかりにして、未来を作るという作業が我々の基本的な日常である。この際には、過去を否定しながら未来を作ることだってできることはいうまでもない。

過去の遺産として最大のものは、いわゆる理論とよばれる。理論は集約された2次データの塊ともいえる。理論は、未来を完全に予測するものではない。それでも理論が求められるのは、それが何かしら未来へ示唆を与えると考えられているからだろう。

少し話がそれたが、そういう意味でも古い資料、さらには理論には価値がある。ネット時代に僕たちが求めるべき資料として、さらには未来を作る手がかりとしてというわけだ。

具体的な探索方法は、ELNETなどが使えれば検索しやすい。けれどもこれは有料だからそう簡単には利用できないかもしれない。所属組織や大学機関が契約していないかどうかをまず確認してみよう。他の新聞記事であれば、別途データベース化されているからこれを検索するという手もあるだろう。いずれにせよ、過去を知り、それを一つの手がかりにして未来を作っていくという作業が求められることになる。