対話型AIツール「ChatGPT」(米オープンエーアイ社開発)の日本語での作文精度の高さが大きな話題になっている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「試しに『ブッダならば、愛する者と死別する苦しみをどう解決しますか』と問うと、わずか1分後に、487文字の回答が戻ってきた。AIの登場により、人々の“悩み”解決の新たな手段が増えたことになるが、AIは“死”の定義をあいまいにし、宗教の存在を骨抜きにする恐れもある」という――。
ChatGPTを提供するオープンAI社のHP
画像=ChatGPTを提供するオープンAI社のHPより

対話型AIツール「ChatGPT」は人の悩みを解決するか

人工知能(AI)の技術が、仏教に急激に接近しつつある。

昨年秋にサービスを提供し始めた「ChatGPT」(米オープンAI開発の対話型AIツール)の作文精度は驚くほど高く、仏教界でも話題になりつつある。AIの登場により、人々の「悩み」の解決に導く新たな手段が増えたことになる。しかし、AIは「死」の定義をあいまいにし、宗教の存在を骨抜きにしてしまうことも考えられる。シンギュラリティの時代の到来は、宗教界をどう変えるのか。

近年、仏教界にDXを取り入れる動きが加速している。デジタルによる決済、オンラインによる法事や法事予約システム、クラウド型檀家管理システム、墓地販売システムなどの導入である。寺院DXの多くは、寺院の運営や管理に関する「内向き」のものだ。

そして、一般の人々や檀信徒に向けた「布教」や「グリーフケア」などの「外向き」の分野においても、DXの波が立ち始めた。すでに、ネット掲示板やZoomを使って、僧侶と対話や悩み相談ができるサービス(hasunoha=ハスノハなど)が登場し、かなりの支持を集めている。

2年前には京都大学発のスタートアップ企業テラバースが「ブッダボット」と呼ばれるサービスを開始。ブッダボットは、現代人の悩みや社会課題に対して仏教的観点から回答する仏教対話AI。最古の仏教経典『スッタニパータ』から抽出したQ&Aリストを、AIに学習させた。スマホ上にブッダのデジタル画像が浮かび上がり、「コロナ禍をどう乗り越えればよいでしょうか」などの悩みに回答してくれる。

しかし、ブッダボットのサービス開始時は「傲慢になってはいけない」など、荒っぽさの残る回答に終始していた感は否めなかった。回答パターンも200通りと少なかった。

同社は昨年末には、この技術を発展させ、さらに企業人や仏教学者ら知見を取り入れた「仏教哲学コンサルティングサービス」も始めた。これは「仕事がつらい」など、企業の従業員の悩みに対し、仏教の教えに基づいてAIが解決してくれるものだ。

「仕事がつらい」という悩みへの回答例はこのようになる。