2012年7月9日(月)

労働契約 -就業規則を信じてはいけない

PRESIDENT 2012年7月30日号

著者
村上 敬 むらかみ・けい
ジャーナリスト

1971年、大阪府生まれ。東京外国語大学外国語学部(マレーシア語科)卒。ビジネス誌・エンタープライズIT誌を中心に、自己啓発から経営論まで、幅広い分野で活躍中。

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答えていただいた人 弁護士 向井 蘭 文=ジャーナリスト 村上 敬 図版作成=ライヴ・アート
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転職が決まったものの、前の会社の就業規則に「自己都合退職は予定日の1カ月以上前に申し出ること」と定められていたため、すぐ辞められずに困ったという話を聞いたことはないだろうか。

就業規則を盾にされると、決まりだから仕方がないと納得してしまう人もいるだろう。しかし、騙されてはいけない。民法には、期間の定めがない労働契約の場合、退職の通知をしてから2週間で契約を解除できる旨が定められている(民法第627条第1項)。就業規則にどう書かれていても、辞表を出して14日経てば辞められるのだ。

ただ、労働者は入社時に就業規則を確認しているはず。当事者間で同意があったのに、なぜ就業規則を無視できるのだろうか。労務問題に詳しい向井蘭弁護士は次のように解説する。

「就業規則は会社側が一方的につくるルール。そのため法律に違反しないことはもちろん、合理的でなくてはいけないという要件が労働契約法に定められています。入社時に周知されていても、合理的でない決まりなら、社員は従わなくていいのです」

注意したほうがいい規則はほかにもある。たとえば「有給休暇の取得に上司の許可が必要」はアウト。有給休暇は、6カ月以上勤務し、8割以上出勤した労働者に認められる当然の権利(労働基準法第39条第1項)。原則的に会社側は拒否できない。

「会社側に認められているのは、有給休暇の時季を変更することだけです。しかも変更が許されるケースは稀。たとえば慢性的に人手が足りない職場で、『忙しいから1カ月後にしてほしい』と変更させるのはダメ。有給休暇の時季を変更できると就業規則に書かれていても、争いになれば、多くの場合、労働者側が勝ちます」(同)

また「遅刻3回で欠勤1回とみなして賃金を控除する」という規則も合理的でない。社員が遅刻した場合、その時間分の賃金カットは認められているが、それ以上の1日分の賃金をカットすれば法令違反だ。

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