2012年5月24日(木)

抗弁権 -連帯保証人は「保証人」ではない

PRESIDENT 2012年5月14日号

答えていただいた人 (株)NEKO‐KEN代表取締役 吉田猫次郎 文=ジャーナリスト 村上敬 図版作成=ライヴ・アート

知人から「賃貸マンションに引っ越すから保証人になってほしい」と頼まれたら、どうすべきだろうか。

実家の借金の連帯保証人になって多額の借金を背負った経験をもつ事業再生コンサルタントの吉田猫次郎氏は、「判を押す前に、必ず契約書の保証人欄を見てほしい」と警告する。

「保証人には、ただの保証人と連帯保証人の2種類があります。賃貸契約書の保証人欄には最初から“連帯保証”と印刷されていることが多く、保証人=連帯保証人が常識になっています。深く考えず判を押すと、自覚のないままに連帯保証人になって大きなリスクを抱え込むことになります」

なぜ連帯保証人になると危険なのか。それを説明するには、ただの保証人との違いを知る必要があるだろう。

保証人について、民法446条では「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」と定めている。簡単にいうと、保証人は債務者が借金を返さない場合のみ、借金を肩代わりする義務を負うわけだ。この場合、取り立ての順番は、債務者が先、保証人が後だ。

この順序がおかしくならないように、保証人には2つの権利が認められている。まず「催告の抗弁権」(民法452条)。これは保証人が借金の肩代わりを求められたとき、債権者に対して「借金した本人が破産したり行方不明になっていないので、保証人より先に本人から取るべき」と抗弁できる権利をいう。もう一つは、「検索の抗弁権」(民法453条)。これは「借金した本人に財産や収入があることを証明するので、まず本人から取るべき」と抗弁できる権利だ。

その他、保証人には「分別の利益」(民法456条)も認められている。これは保証人が複数いる場合、保証人は債務額を人数で割った金額までしか保証しなくてもいいという決まりだ。

どれも常識的なルールだが、連帯保証になると、あたりまえのことが通用しなくなる。連帯保証人には、催告の抗弁権や検索の抗弁権がない(民法454条)。つまり借金した本人に支払い能力があっても、債権者は連帯保証人に返済を迫ることができる。また過去の判例では、複数の保証人がいても、債権者は一番取りやすそうな一人に借金をすべて肩代わりさせることもできる。

こうなると、連帯保証人が背負う責任は、借金した本人とほとんど変わらない。メリットはないのにリスクだけは目一杯背負う。それが連帯保証の怖さだ。

借金といっても、家賃の肩代わりくらいなら大丈夫と考えている人もいるかもしれない。しかし、その認識は甘いようだ。

「家賃の滞納程度で済めばいいですが、借り主が火事を起こしたりしたら、損害賠償の債務まで負いかねない。連帯保証人になるなら、そうしたリスクまで考えてから判を押すべきです」(吉田氏)

普通はそこまでリスクを背負えない。連帯保証人を断るいい方法はないだろうか。

「家訓で決まっているとか、身内に止められているといって断るのがポピュラーです。無下に断れないなら、かわりに保証会社を紹介してもいいでしょう。また大家さんと交渉して、連帯ではなくただの保証人としてサインしてもいい。大家さん自身、保証人と連帯保証人の違いがわかっていないケースも多いですから、交渉の余地は十分にあります」(吉田氏)

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