「EVは近距離、FCVは遠距離」?

そもそも、トヨタはなぜFCVを開発することになったのか。

図表3は、2014年3月に発行されたトヨタのアニュアル・レポートに掲載されているものだ。

【図表】初期の判断ミスが致命傷に

この図表3を見るかぎり、トヨタはEVを「小型・近距離用」とし、FCVを「大型・長距離用」と位置付けているようだ。

おそらく、こうした位置付けをもとに、トヨタは「EVもFCVも開発する」という「全方位作戦」を採用したのだろう。

ただ結果からみれば、これは致命的な判断ミスだった。

テスラ「ロードスター」が世に出たのは2008年。電池容量は53kWh。航続距離は、一番厳しいEPA基準(実用に近い)で393kmあった。

2012年にはテスラ「モデルS」が発売されている。

こちらは、小型どころかフルサイズの車で、電池容量は100kWh、航続距離は最高647km(EPA)。ほぼガソリン車並みのスペックを誇る。

つまり、この時点ですでにEVは「小型・近距離専用」ではなかったのだ。

現在では、Lucid「Air」の840km(EPA)を筆頭に、2代目「MIRAI」の航続距離647kmを上回るEVは珍しくない状況となっている。