なぜ新聞社に動静の変更を求めたのか

1日の夕方から倦怠感を自覚した知事は、翌2日に38度の発熱を認めたため新型コロナの自己抗原検査を行い陽性を確認したという。自身のSNSにも「コロナに感染しました」とその事実を同日公表したものの、当初の書き込みには元日の行動として「公舎などで過ごす 夕方、倦怠感あり」との記載にとどめていた。

宮崎日日新聞に「知事の動き」として毎日掲載される知事の前日の行動歴については、1日の時点では「14時 宮崎神宮・県護国神社に初詣」と当該新聞社に報告していたものの、コロナ陽性が判明した後には「終日、公舎などで過ごす」と変更するよう依頼していた。さらに報道各社へのプレスリリースにおいても1日の行動歴を「公舎などで過ごす」と記載するにとどめて初詣の記述を伏せたという。

折り畳まれた新聞
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宮崎日日新聞はこの県の“要請”には応じず、知事の初詣は3日付紙面に掲載される運びとなり、結局この一連の工作行為は失敗に終わったわけだが、その後この経緯が報じられたことで隠蔽工作自体が露見し、多くの非難を浴びることとなったのである。

なぜこのような行動をとったかについて知事の書き込みでは、「初詣自体が知事の職務に関わるものではないことに加え、その過程で濃厚接触などが無かったことを踏まえ、県民に無用の不安を与えないようにという職員の判断もあってのこと」との説明がなされている。

感染したことを責める人は誰もいないが…

そしてこの「職員の判断」については、知事は事前に職員から相談を受け、了承していたとのことである。じっさい知事は1月8日の会見で「(初詣で)多くの人混みの中に入っていたということであるので、そこはしっかり掲載してもらうべきというところがある中で、一方で不安を与えないようにという考え方もあった。自分としては少し迷う状況の中で(職員に)問題を投げかけただけにとどまっていたのが反省点」であると述べている。

つまり報道機関に対して事実を伏せた情報を掲載するよう要請した事実と、当該工作について知事が事前に承知していた事実が確定したということだ。この事実を踏まえた上で、この一連の行為と知事の釈明について分析してみよう。

まず知事がコロナに感染したことについてであるが、コロナ上陸当初は感染すること自体が悪で、さも感染者の行動に原因があるかのごとく言われるなど、当事者に負い目を感じさせるものであったが、さすがに3年経過し、今は「誰もが感染し得る」「感染した人に責任はない」という認識がほとんどと考えて良いだろう。本件でも、感染したことについて知事を責める人は誰もいない。知事が自身のSNSですぐさま公表したことも評価できる。