被害は今後さらに増えていく可能性

同報告書では「老後20~30年間で約1300万~2000万円の老後資金が不足する」と試算されたのですが、しかし、雇用者の約4割が非正規雇用で、十分な貯蓄のない人、退職金や厚生年金が期待できない人が大勢います。

「年金は将来的にさらに削減されていきそうだ。そもそも、この超低金利では預貯金の利息などもまったく期待できない」──そうした現実を見据えて、恐怖にも近い感覚に駆られた若い現役世代が急速に増える結果になりました。

その一方で、日本政府は2003年にスタートした証券税制の優遇措置以降、「貯蓄から投資へ」と旗を振り、日本国民の現金・預貯金1000兆円を投資へ誘導しようとしてきました。

「国にも年金にももはや頼れない。資産運用でなんとか老後資金を作らなければいけない」と考える人はどんどん増加していったのです。

そうした流れの中で、たとえば「月4%のリターンが期待できる資産運用法です」といった触れ込みの広告が、SNSなどを通じてもっともらしく流れてきたらどうでしょう。思わず出資に応じてしまった。しかし、実際には怪しい投資話でしかなかった……そういう経験をする人が、表面化していないだけで相当数出始めていた。

このグラフからはそんな社会の動きが読み取れます。そしてその傾向は、今後ますます強まっていく恐れがあります。

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写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

著名人を使った「なりすまし詐欺」

昨年1年を振り返っても、さまざまな怪しい運用話がありました。

たとえば「LINE」のアカウントを用いて、投資や資産運用の世界で名の売れた人たちが、「お友達になってくれたら投資に関する情報を提供します」といったコメントとともに、SNSで広告展開を行ったケースがありました。

ところが不思議なことに、私がこの情報に顔写真を掲載された当人に直接確認したところ、「まったく身に覚えがない」と言う人が続出しました。つまり、特定のサイトに誘導することを目的に、こうした著名人の写真が勝手に使われていたのです。

これは「なりすまし詐欺」の一種で、恐らくクリックすると、多くが投資LINEグループのようなものに誘導され、「儲かる情報をあなただけに有償でお売りします」と情報商材を売りつけられる仕組みだったと考えられます。