妻の急逝で取り残されたマネーリテラシーゼロの夫

そんな加藤夫妻のお財布を管理していたのは、妻の永子さんです。お小遣い制で、結婚当初から平均して毎月10万円のお金が加藤さんに渡されていたといいます。もともと見栄っ張りで派手好き。交友関係も広く、お金に余裕のあるふたりはどちらも浪費家ではありましたが、その分、きっちり稼いで永子さんが貯金もしていたので、何ら問題なく生活できていました。

そして、元来仕事が好きなわけでもなかった加藤さんは、60歳で早々に廃業。妻の永子さんはフリーランスとなって仕事を続けていたこともあり、現役時代と変わらずお小遣いをもらって日々、遊んで暮らしていました。

転機となったのは、加藤さんが70歳の時に妻の永子さんが急逝してからです。まずネックとなったのが「お小遣い制」でした。当たり前ですが、お小遣いをくれていた永子さんはいないので、お金の支給は途絶えます。彼はそこではじめて「お小遣いがない! 無一文になってしまった!」と焦り、自分の家のお金がどうなっているかをまったく知らないままきていたことに気づいたのです。

暗い部屋で一人、立って外を見つめている男性
写真=iStock.com/selimaksan
※写真はイメージです

「70歳の大人がそんなことある?」と思うかもしれませんが、お小遣い制というしきたりが身体に染み付いている人は怖いですよ。本当にただただ、「お小遣い◯万円」の枠の中で自由にお金を使うだけ。加藤さんのお金のリテラシーはまるで小学生のようでした。貯蓄という概念も、育てて増やすということもまったく知らないのです。