例えば、ある1社がマーケットシェアの大半を獲得している部品があるとします。

その会社が命懸けで開発し、長年、研究開発して質を上げた結果、市場の過半数を奪取してしまった。すると他社はもう戦えません。他社とすれば絶対にかなわない分野で頑張るよりも、自分が勝てる分野の部品にお金とコストをかけようとします。すると、その部品は1社独占に近い状態になってしまう。

スピードを速めるためにあえて入札をやめる

入札をしても、そこしか作っていなければやる意味はないのです。そして、これまでは無理やり、他社に入札に参加してもらったことがなかったとは言いません。公平性を担保するには入札が必要という前例があったからです。

しかし……。

車の部品は3万点とされています。そのうち7割は外注部品です。調達側が外注品のすべてを入札したり、相見積もりを取っていたりしたら、手間とコストは膨大になってしまいます。

そこで、ある業務カイゼンチームは「即決型の拡大」と題して、入札を見直すよう提案しました。

つまり、事実上、1社しか作っていない部品に対しては、他の部品と同じように入札方式にするのではなく、相対して交渉する方式に変えたのです。

相対して交渉する方式を「アルファ型」そして、入札する調達方式を「ベータ型」と分類した提案でした。

ボンネットを開けて整備中の車
写真=iStock.com/Shutter2U
※写真はイメージです

リードタイムを削れば、周辺の仕事も減らせる

アルファ型とは事実上、その会社しか作っていないとか圧倒的な競争力を持っている部品です。にもかかわらず、やるべき仕事を同じようにやって、なおかつ、競合する数社にお願いして参加してもらってコンペをやらざるをえなかった。

コンペをやることによって価格が安くなることを期待したのだけれど、競合する他社はその部品を多くは作っていないわけですから、安くはなりません。

そうすると、コンペをするだけ時間とお金がもったいないわけです。そういう部品については即決しようとなったのです。そうすればやらなくていい仕事が減ります。

トヨタは合理的です。仕事を増やそうとしません。リードタイムを短くするのが同社の「鉄の掟」みたいなものですが、リードタイムを短くすれば付属する仕事が減ります。どうしてもやらなければならないことだけをするようになります。

部品調達のコンペの改廃についても、こうした考え方が根本にあるのです。