共有物件が再建築不可の場合は、最悪のケースに

それはどんなケースかというと「共有名義」かつ、前述の「4つの瑕疵物件」である土地と家だ。

なかでも厄介なのが法律的瑕疵物件だ。現行の建築基準法の接道義務(原則として幅4m以上の道路に2m以上接していないといけない)を満たしていないと、住宅は取り壊したとしても、その敷地内では新しい家は再建築不可となる。それゆえ、どんなに低い価格設定をしても転売は難しくなる。

ネクスウィル社長・丸岡智幸氏(写真提供=同社)
ネクスウィル社長・丸岡智幸氏(写真提供=同社)

丸岡氏は続ける。

「日本にある家の3分の1は、接道義務を満たしていない再建築不可の住宅と言われています。その家を引き継いだ子供たちは、売却できなければ固定資産税だけを払い続けることになります。しかし、その下の世代になると引き継ぎもされず、所有者不明の空き家となってしまうこともあります。そんなふうに空き家になってしまった家の面積を合わせると2016年の段階で九州本島を上回る規模に達し、2040年には北海道ぐらいの大きさになるだろうとの試算があります(※)。空き家といえども、所有者の許諾なしに処分することができないので、道路の整備などの公共事業にも影響を与えます。これを防ぐ意味もあって、2024年には相続登記が義務化されることになります。今後、空き家問題がさらに顕在化するでしょう」

※出典:日経電子版 2019年8月2日付「所有者不明地 国土の2割に?

「繰り返しになりますが、揉め事になりそうな共有物件は、離婚した時、あるいは親から相続した時に時間をおかずにスパッと清算するのが一番いいと思います。解決すべき問題を棚上げにして放置すればするほど、事情が深刻化し、売買がしにくくなる。病気と一緒で、早いうちに手を施すべきだと思います」

しかも、ワケあり物件を仲介する不動産会社の中には、所有者が困っていることをいいことに、上から目線で買い叩く業者もいるとか。高すぎず、安すぎず適正価格で売買する不動産会社を選ぶべきだと、丸岡氏は断言する。

ワケあり物件マッチングサイト、自治体と空き家を繋ぐサービスもあり

しかし、よく知らない不動産会社にアプローチするのは不安だという人もいるだろう。その場合は、売買だけでなく、貸し借りや物件の管理運営の依頼と希望者をつなぐマッチングサイトに登録する方法もある。購入するのは無理でも、古い空き家をリノベーションして住みたいという若者が増えているからだ。

ネクスウィルでも「URI・KAI」というサイトを運営。当事者同士が直に繋がることで、仲介手数料を省くメリットをユーザーは享受できる。

また、自治体、地域、事業者、空き家所有者を繋ぐクラウドサービスを展開している空き家活用(東京都港区)に登録すると、所有する空き家に対してあらゆる相談が可能だ(基本相談は全て無料)。

さらに2022年11月には大手保険会社と提携して「空き家いったんあんしん保険サービス」を付帯するサービスもスタート。1年間保険料は無料で、不動産会社の情報に掲載される前の物件と、所有者自身にも賠償責任保険が適用される。

ワケあり物件や空き家に関するトラブルに、誰もが巻き込まれる可能性がある。これは決して対岸の火事ではない。

しかし「自分が損するのが悔しい」「親が苦労して建てた家を見捨てるわけにはいかない」という感情に押し流されてしまってはかえって損になることがある。無用な争いに時間やお金を費やし、不幸な結果に終わってしまうのは避けたいものだ。

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