「習近平おじいさん」のためだけの教科書

2021年9月、新学期を迎えた中国では、習近平の思想を教えるためだけに作成された教科書が小学校から大学まで配布された。新しい教科書は、習近平をあらゆる事柄の権威で、彼に忠誠を誓うことが正しいことだと説いている。

小学校の教科書では、親しみを込めて習主席を「習近平おじいさん」と呼び、最初から「愛国心」を植えつける記述が続く。

また、高校の教科書では、台湾問題について「台湾独立勢力の分裂工作を打ち壊す」「武力の使用を放棄しない」などといった記載もある。

台湾の島は地図上に赤いペンでマークされています。
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こんな教えを小学生時代から刷り込まれて育つ子どもたちは、いったいどのような大人になるのだろうか。それを予測するには、中国教育部が教科書の中に組み込んだ「習近平が中国共産党100周年式典で語った重要講話」を見ておかなければならない。

2021年7月1日、式典に臨んだ習近平は、北京の天安門の楼上にマオカラー(立ち襟)の人民服姿で姿を現した。楼上での演説とマオカラーのいでたちは、毛沢東を強く意識したものだ。

「中華民族の偉大なる復興」への野望

その場で、習近平は、中国と中国共産党の歩みを振り返り、小康社会(ややゆとりのある社会)実現の成果を総括し評価したうえで、

「歴史を鑑に未来を切り開くとき、必ず国防と軍隊の近代化を急がなければならない。強い国には強い軍がなければならず、軍強くして初めて国家は安泰となる」
「人民の軍隊を世界一流の軍隊に作り上げ、より強大な能力、より確実な手段で国家の主権、安全保障、発展の利益を守らなければならない」

と述べ、「強国の実現」、そして「中華民族の偉大なる復興」という中国の夢、言い換えるなら自身の野望に言及した。

さらに、約1時間に及んだ演説の後半で、香港問題や台湾問題に触れ、

「中国を抑圧し、隷属させるような妄想を抱く者は、誰であれ、14億あまりの中国人民が血と肉で築いた鋼の長城に頭をぶつけ、血を流すだろう」
「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の終始変わらぬ歴史的任務である。いかなる者も、国家の主権と領土保全を守る中国人民の強固な決意、断固たる意志、強大な能力を過小評価してはならない」

と強調してみせた。