片づけの重要性を「データ」で示す

片づけをしてくれない人に効果的なのが、「家にいる時間を計算し、その事実をデータで示す」ことです。

NHK放送文化研究所の「2015年 国民生活時間調査報告書」によると、勤め人の平均在宅時間は1日16時間。睡眠時間を7時間としても、1日9時間は「自宅の風景」を視覚刺激として目にし続けているのです。

仕事・勉強・家事・食事・くつろぎなど、朝起きてから夜寝るまで、潜在的刺激として、家庭内のあらゆる場所に置かれたモノが目に入り続けます。本人が意識していなくとも、日々の細かい視覚的ストレスの脳への刺激の量は甚大であり、家庭生活の満足度を低下させていきます。テレワークの方や主婦の方はなおのこと、ぜひ、どれくらいの時間、自分やパートナーが家にいるかを計算してみましょう。

そして、そのデータを示しながら、「1日10時間以上もこの部屋にいるよね。部屋にこれだけモノが多いと、過ごしにくいかもよ?」とパートナーに片づけの重要性を伝えるのでです。イライラが積もり積もって悲劇を招く前に、「ファクト」の力を借りて早め早めに解決しましょう。

夫婦で片づけの習慣・能力に差があるのは当たり前

パートナーがずぼらで、散らかっていても平然としている。結局自分ばかりが先に気がついて、片づけることになるのは不公平だ!

そういってガミガミ怒ったところで、残念ながら両者の溝は一生埋まらないでしょう。そもそも、散らかりに対する許容度には、大きな個人差があるからです。

東京大学大学院新領域創成科学研究科は、被験者を1人ずつ居住空間に入れ、空間に徐々にモノを増やしていって、どのポイントでストレスを感じるかという実験を行ないました。

被験者の反応から、ストレスが高まる閾値には大きな個人差があることがわかりました。「多少モノが散らかっていた方が、何もモノがないよりもむしろ落ち着く」という人も一定数存在したのです。

片づける能力は、その人の育った家庭環境に依拠します。目白大学大学院心理学研究科の調査によると、子ども時代に同性の親がどのように片づけに向き合い、片づけるよう指導をしたかによって、片づけ行動に変化が出ることがわかっています。

「同性の親」という点がポイントで、仮に整理整頓が行き届いた実家で育った男性でも、母親一人が片づけを担い、父親は何もしていなかった場合は、家庭をもった際、自分の父親と同じ態度を取ることが多いのです。

家庭の環境以外でも、視野の広狭・身長の高低・空間把握能力・記憶力など、片づけ能力に影響する要因は多く存在します。視力が悪く、細かい埃やゴミがそもそも見えていないという人もいます。

後天的にスキルを上げようにも、集団で片づけの練習ができる場は幼稚園くらい。まずは、夫婦間で片づけの習慣・能力に差があることは「当たり前」のこととして受け入れるところからスタートしましょう。