値上げよりも裾野の拡大

――課題を感じている部分はありますか。サブスクビジネスでは、離脱率や値上げせざるを得ない状況に悩む経営者も多いようです。

今の最大の課題はコロナ禍の影響による木材価格の高騰、いわゆる「ウッドショック」の余波です。キャビンを規格化しておいてよかったなと思う一方、弱小スタートアップなので建築コストの上昇には苦労しています。

需要の裾野をどう広げていくかという点も課題です。会員登録待ちが解消できたら、法人との契約を検討するなど、裾野を広げられるメニューを考えていくつもりです。

離脱率については、僕はこれがいちばん重要な指標だと思っています。今のところ会員の定着性は高く、支持してもらえているという手応えを感じていますが、それでもやはり離脱される方はいます。いかにして離脱率を減らしていくかも今後の課題ですね。

価格改定は現時点では考えていません。価格を上げるのではなく、需要の裾野を広げることで事業を成長させていくつもりです。拠点が100以上になったら検討するかもしれませんが、それも自分たちや会員の方々が「その価格に見合うだけの正当な価値がある」と納得できればの話です。僕たちは高級ホテルを目指してはいないので、方向性としては値上げより裾野の拡大を狙っていきます。

福島弦CEO
撮影=プレジデントオンライン編集部
福島弦CEO

コロナ前の「100%出社」には戻らない

――事業は現在は好調ですが、コロナ後も成長を続けられそうでしょうか。

大都市圏ほど、どこで子どもを自然に触れさせるか、どこで自分がリフレッシュするかと悩む人は多いと思います。僕は札幌出身ですが、両親はいつも僕たちをどこに連れて行こうかと悩んでいました。

都市に住む若者の間でも、休日を自然の中で過ごしたいというニーズが高まっています。これは日本に限ったことではなく、例えば今ジャカルタでは若者の間でグランピング人気が広がっています。家族連れや若者のこうしたニーズは、コロナ後もなくなることはないと思っています。

僕たちの事業は、コロナ禍によるリモートワークやワーケーションなども追い風になって成長してきました。でも僕は、コロナ後の世界が100%リモートワークになるとも、100%出社勤務が戻るとも思っていません。この2つの間を行き来するような、グラデーションのある働き方が増えるのではと考えています。

このグラデーションの部分に、「SANU 2nd Home」がうまくはまっていけたらいいなと思います。コロナ後のライフスタイルに欠かせないピースとして、スタンダードな存在になっていけるよう、今後も事業を成長させていきます。

(構成=辻村洋子)
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