多くの業界が東芝に手を差し伸べているが…

東芝再建に向けた取り組みは、徐々にではあるが動き始めた。銀行、リース、自動車、半導体、電力会社などが東芝に出資する方針を表明、あるいは検討している。それは重要な変化ではある。ただ、東芝に出資するアクティビストファンドの存在などもあり、今後の展開は依然として不透明だ。

インタビューに答える東芝の島田太郎社長=2022年9月12日、東京都港区(写真=時事通信フォト)
インタビューに答える東芝の島田太郎社長=2022年9月12日、東京都港区(写真=時事通信フォト)

それほど東芝はいかんともしがたい状況に追い込まれている。東芝の事業運営の歴史を確認すると、事業環境の変化にもかかわらず、組織は変わることができなかった。過去の大型買収に起因する巨額損失の発生など、負の遺産も積み重なった。東芝は縮小均衡に陥った。その状況下、雇用を削減して収益力回復への取り組みを加速させる選択も難しかった。東芝の経営体力は低下し、再建は難航している。

今後、再建への道のりはさらに長く、険しいものになると予想される。理論的に考えると、東芝は大胆にコストカットを進め、得られた資金を世界経済の先端分野に迅速に再配分しなければならない。それに耐えられる組織を構築できるか否かが、長期存続に決定的インパクトを与えるだろう。

なぜこんなにも再建に時間がかかっているのか

東芝再建に、想定された以上の時間がかかっている。今後の道のりも長くなりそうだ。それだけ東芝には負の遺産が累積してきた。一つの要因は、環境変化への対応が遅れたことだ。かつて、東芝は総合電機メーカーとして世界的な競争力を誇った。ただ、1980年代の半ばごろから、過去の成功体験に、より強く執着するようになったと考えられる。時間の経過とともに、環境変化への対応を進めることは難しくなった。

例えば、メモリ半導体分野で、かつての東芝は世界の半導体産業を牽引する有力企業と目された。1980年代、東芝をはじめとするわが国半導体産業は一時、米国を上回る世界トップのシェアを手に入れた。東芝はパソコンなどのデータ一時保存に使われるDRAMの分野でシェアを獲得した。

さらに、同社は電源が切れてもデータが消去されないNAND型フラッシュメモリの製造技術を開発した。そのほかにも、テレビ、ノートパソコン、発電などの社会インフラ面で東芝は世界的な企業として成長を遂げた。