日本の野球界には、依然として「先発完投」を理想とする風潮がある。スポーツライターの広尾晃さんは「いますぐ認識を改めるべきだ。昭和の時代と比べ現代の投手は体の負担が大きい。昭和の投手のように先発完投を続ければ、すぐにケガをしてしまう」という――。
プロ野球沢村賞/説明する堀内委員長
写真=時事通信フォト
沢村賞が該当者なしとなった経緯を説明する堀内恒夫委員長=2019年10月21日、東京都港区

現実から乖離した「投手最高の賞」

10月24日、沢村栄治賞(沢村賞)の発表があり、2年連続でオリックスの山本由伸が受賞した。その抜群の成績からして順当な結果ではあったが、堀内恒夫選考委員長は「1人しか選びようがない。選考するのは楽かもしれないけど、寂しい気がしないでもない」と感想を漏らした。この感想も近年では聞きなれたものになっている。

そもそも沢村賞とは、そのシーズンの両リーグで最も優秀な成績を残した先発投手1人に与えられる「投手最高の栄誉」だ。1947年制定。プロ野球草創期の大エースだった沢村栄治の名前を冠している。

選考基準は以下の7項目。1982年に制定された。

登板試合数―25試合以上
完投試合数―10試合以上
勝利数―15勝以上
勝率―6割以上
投球回数―200イニング以上
奪三振―150個以上
防御率―2.50以下

しかし、この選考基準は先発・救援の「投手の分業」が進んだ現在では、現実から乖離かいりしたものになっている。