世界的産業の盟主は自動車→半導体へ

また、ホンダがエンジン車から電動車へのシフトを加速させるためには、半導体の設計開発や製造関連の技術を取り込むことが欠かせない。拡張現実(AR)などの新しいデジタル技術、メタバース、自動車の自動運転や脱炭素など、より多くの分野で、より大量のチップが使われるようになる。台湾積体電路製造(TSMC)やデンソーと合弁で工場を建設し、画像処理半導体や車載用半導体の製造力強化に取り組むソニーとの連携強化は、ホンダが環境変化に対応するための選択肢を増やすことにつながるだろう。

多くの電気部品を備えたプリント回路基板。
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内燃機関を搭載した自動車は裾野の広い産業構造を形成し、主要国の産業の盟主としての役割を発揮してきた。しかし、その地位がより高性能な半導体にシフトし始めているといっても過言ではない。米国政府が半導体産業界への支援を強化しているのはそうした変化が加速している兆候だ。ソニーとホンダの連携強化の根底には、世界の産業構造の大転換への対応力を高める考えがあるといえる。

国内メーカーではなく米韓企業を選んだホンダ

今後、世界全体で、新しい需要創造を目指した企業などの取り組みは加速する。先行者利得を手に入れるために、ソニーとホンダはアライアンス体制を徹底して強化し、新しいサプライチェーンを構築しなければならない。それが遅れれば、両社はテスラや中国のBYDなどの後塵を拝することになるだろう。

注目したいのが、米GMと韓国LGエナジーソリューションとホンダのアライアンス強化だ。ホンダは自主性を最大限に発揮するために、国内自動車メーカーではなく、米韓企業との連携を選択したとみられる。その上でソニーとの連携が強化されている。インドネシアにてLGエナジーソリューションは現代自動車と合弁でEV用のバッテリー生産を行う予定だ。バッテリーの製造コスト面で韓国企業は競争力を高め、シェアを獲得している。

ただし、その安全性に関しては発火などの不安が払拭しきれていない。その部分で電動車などの安全性向上を実現したホンダの製造技術が生かされる部分は大きいだろう。