炎症物質「サイトカイン」が悪さをする

慢性炎症が、知らず知らずのうちに、命にかかわるような病気を引き起こすリスクがあることをご理解いただけたでしょうか?

慢性炎症は、体の機能を低下させるため、すぐに病気にならなかったとしても、体の調子を悪くする原因にはなります。

医療施設では「どこも悪くない」と言われても、「なんとなく調子が悪いんだよな……」と感じたら、あなたの体の中では慢性炎症が悪さをしているのかもしれません。

もうひとつ、慢性炎症のこわいところは、炎症が飛び火して、さらに別の病気を引き起こすところです。

炎症が起こると、「サイトカイン」と言われる炎症物質がつくられるようになります。この物質は、体に異物が侵入してきたことを知らせて、炎症を引き起こすはたらきがあります。免疫機能に必要な物質なのですが、炎症が長引くとつくられすぎてしまい、さらに炎症を促進します。

さらに、サイトカインはそこだけにとどまらず、炎症でダメージを受けた血管に入り込んで、全身のさまざまな病気のもととなることがあるのです。

炎症が全身に飛び火する歯周病

わかりやすいのが歯周病です。

歯周病菌に感染して慢性炎症が起きて歯周病になると、炎症物質が血液にのって全身に運ばれて、さまざまな病気を引き起こすことが知られています。その病気のひとつが関節リウマチですが、他にも有名なものとして糖尿病があります。

サイトカインは血糖値を下げるはたらきがあるインスリンというホルモンのはたらきを悪くします。そのため、血糖値が高くなりやすくなるのです。

反対に、糖尿病の患者さんが歯周病を治療すると、血糖値のコントロールがうまくいくという研究報告も多くあります。

そして認知症も、歯周病と関係していると言われる病気です。