「俺が飴をやるから、鞭をやってほしい」

最初にサポートした後輩がぐんと成長したことが評価され、職場で「佐藤再生工場」と呼ばれるようになっていた。

上司と密に連携し、指導にアドバイスを受けながら進めていく。しかし、まさかのそれが裏目に出てしまう。

上司の誤った指導を鵜呑みにしたことで、手痛い失敗を追うことになったのだ。

「私も20代半ばと若かったので、頼りにされることがとても嬉しくて。上司からは『俺が飴をやるから、佐藤さんは鞭をやってほしい』と言われていました。今からすれば、そんなことを平気で言う上司などあり得ないけれど、それまで後輩がいたこともなかったので、先輩としての指導ってそういう感じなのかな……?と。とにかく期待に応えたい! と。深く考えず、教えるメンバーへの言葉が日に日に厳しくなっていきました」

あるとき「佐藤さんの指導が怖いです」という声があったと、人事部からヒアリングを受けた。同僚や直属の上司は、そのような指示があったことを知っているので、フォローしてくれたが、佐藤さんがショックを受けたのは肝心の上司にだった。

上司が言ったのは「そこまでやっているとは思わなかった」という冷ややかな言葉。

「“絶対に嘘じゃん”と。私が後輩と話していたのは、個室ではなく、上司やみんながいるオープンスペースででした。その上で、上司には『もっとやっていいよ』と言われていたんです。すごく悔しくて、家に帰って泣きましたね」

と佐藤さん。社会人経験の中でも一度きりの涙であり、忘れられない失敗だという。

それから3年勤めた後、佐藤さんはキャリアアップを目指して、転職を決意。2015年1月、佐藤さんはLINEに入社した。

1日7アポ、点滴を打って会食へ

「LINEビジネスコネクト(現Messaging API)」の営業組織の立ち上げメンバーとして加わった。当時のLINEはまだまだアナログな組織で、あまりルールも固まっていなかったので、営業活動の傍ら、ガイドラインや申込書・契約書の作成からテクニカルサポートまで、抱える業務は膨大だった。

「当時は人手も足りず、1日7件ほどのアポに向かうことに。いつも45分刻みでダッシュしている感じでした。過労からか胃腸炎になってしまい、毎週のように会社の近くの内科へ駈け込んでは点滴をしてもらう。そして夜は営業先との会食に行くような毎日で……」

それでも持ち前の馬力と決断力、作業スピードの速さで、入社2年目には管理職に昇進した。その後、B2Bマーケティング組織の立ち上げ等を担っていく。