お金の知恵も「遺産」になる

「子供にはお金を残すな、自分のためにお金は使い切れ」と言う方がいらっしゃいます。

けれども私は子や孫のために残せるのならできるだけ多くのお金や資産を残そうと思っています。そして、それ以上に大切なことは、子や孫がお金に関する知恵を身につけることだと思っています。お金の暗黙知です。

泳げることや車を運転できることと同じで、お金の知恵を身につけていることは大きなメリットを持ちます。お金についての暗黙知は、幼い頃からの躾の一部として身につけているのが理想だと私は考えています。

人生では往々にして、条件反射的な対応が必要な瞬間があります。適切な判断と実行が求められる緊急時や非常事態時に、自然と反射的な対応ができることは、何物にも代えがたいほど重要なものです。お金に関する知恵もこれにあたります。

この暗黙知を幼い頃から身につけることができれば、目には見えませんが、これほどの遺産はないと思います。

FIREの恩恵を最大に受けるのは子や孫

さらに、FIREを自分一人のものだと限定すると、「まあ、ここまででいいか」と自分自身に妥協してしまう可能性が大きくなります。しかし、将来のある子や孫のためとなると、向き合う心構えから異なってきます。妥協することもほぼなくなるでしょう。

「お金を増やす、増えるのは時間との関数」です。資産をつくり出すには当然、時間がかかります。実は、資産家の家に生まれるということは、その資産をつくり出す時間を祖父母や父母が費やしてくれたということで、祖父母や父母の時間をお金という形で受け取っているのです。生まれたときからFIREを考える必要のない人は、自由気ままに過ごすことができる「時間」をお金という形で受け取っているのです。

木製ブロックに「FIRE」の文字
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです

FIREの恩恵を最大に受けることができるのは、実は子や孫だということに気づいていただきたいのです。FIREを目指して生きるということは、実は、次の世代を担う子供たちの未来、新しい未来を生み出すことができる可能性を膨らませているということなのです。

自分だけのFIREは、ある意味、切ないものです。目標がレベルダウンしたり、FIREそのものも必要ないと思ってしまうかもしれません。