貯蓄型保険にハイリスクな投資「資産倍増計画」は裏目

最初に目についたのは、外食を含む食費です。夫は平日9時~17時勤務で余裕があるものの、妻は多忙でコロナ禍前は深夜残業や土日出勤も多く、今も毎日疲労困憊こんぱい。夕飯は、帰宅途中のコンビニで買ったお弁当がメインでした。たまの休日はレジャーに出かけますが、疲れてお弁当を作る気力体力も残っておらず、出先で食べたり買ったりするのが常態化。そのため、食費は5人家族で12万円に達していました。

ただ、基本的には節約意識がある明子さん。お弁当や出先で食べるものはせいぜい1人1食数百円なので、月12万円になるのは他の支出もあるはず。よくよく聞くと、コンビニでお弁当を買う際に、レジ横のホットスナックや新商品のスイーツなどを“ついで買い”してしまう悪癖があることが発覚しました。日々のお弁当を買うたびに、プラスアルファで余計なものを買ってしまえば、食費が上昇するのは無理もありません。

肉まんを取り出すコンビニエンスストアの店員
写真=iStock.com/TAGSTOCK1
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恥ずかしながら、私自身も、仕事で疲れた空腹の体でコンビニに入ると、新商品のビールやアイスクリームについ手が伸びてしまうので、明子さんの気持ちはよくわかります。

さて次の問題点は、生命保険料です。以前、将来の不安から、自宅に訪問した営業マンに勧められるまま高い保険に加入したそうです。見直しをしようと相談に行くと、さらに重複して追加契約するはめに。結果、死亡保障と医療保障合わせて7万円もの保険料を払っていたのです。商品を見せてもらうと、「ここにこんな保障、こんなに必要?」といった手厚すぎる保障。ドル建ての貯蓄型で、使わなかった保険料が将来的に戻ってくる仕組みのため、保険料設定も高めです。聞けば、保険会社自体が高額な商品を扱うことで有名な会社でした。

明子さんは投資に関して、人の意見に影響を受けやすいタイプ。周囲には、ハイリスクだけどリターンの高いアクティブ型の投資を勧める人もいれば、ネットでは「これからの時代は金だ」と声高に言う人もいる。またある人は不動産投資の利回りを強調する。さまざまな考え方に振り回されながら、FXで50万円を失った失敗経験もある明子さんは、「結局、どれを信じたらいいんでしょうか?」と混乱を極めていました。

こうした問題点を整理すると、明子さんの弱点は、営業マンや周囲の人やネット上のオススメに流されるままに財布の口を開けてしまう傾向です。明らかに“押し”に弱い。

そんな傾向がありながらも、このご家庭はお小遣いを少なめに設定していたのはいいのですが、これにはデメリットも。実は、化粧品や洋服、交際費などを夫婦それぞれが持つ“家族カード”から出していたのです。定期的に必要になるものをそれぞれの小遣いからコントロールして出すか小遣い以外の家計から出すか、迷う人は多いですが、家計から出す方式だと結果的に自由に使ってしまいザル家計になりがちです。特に意志が弱い人は、家計から出すのは危険。必要な分を確保した上で小遣いの枠を増やす方がうまくいきます。