2012年5月23日(水)

33万円の日本酒、20万円のお茶が売れる理由

真の高価格ブランドを確立するには、提供する価値にこだわるべき

PRESIDENT 2012年6月4日号

甲南大学特別客員教授 加護野忠男=文
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日本の製造業は厳しいグローバル競争を強いられている。日本が世界で勝ち残るカギはコストを下げることではなく、「高価格戦略」にあると筆者は説く。

高価格そのものが価値を持つ

長引く不況の中で低価格戦略をとる企業ばかりが注目を集めているが、高価格ブランド戦略をとる企業がちらほら出てきた。最近、偶然2つの例を知った。特に探さなくても、偶然に見つかるというのは、そのような企業が増えているからだろう。流れが変わる兆候かもしれない。偶然に出合った一つの事例はお茶をワインボトルに入れて高価格で売っているロイヤルブルーティー。価格は数千円から2万円、最高は20万円前後のものまである。もう一つは、神戸・灘の「沢の鶴」。日本酒を最高33万円の価格で売っている。高額品は海外、特に韓国で人気があるそうだ。ボルドーやブルゴーニュの銘柄ワインに負けない高価格である。先に挙げたお茶も値段ではお酒に負けてはいない。

高価格ブランドは、高価格に見合った価値があるだけではなく、高価格そのものが価値を持つという側面がある。その根拠は3つ。一つはウェブレンがいう誇示支出。見せびらかしの価値である。もう一つは、高価ないいものが買えるというひそかな喜び、はやり言葉で言うと、自分へのご褒美としての価値である。最後はギフトに込める気持ちを伝えるというメッセージ価値である。現在のところ、日本で高価格戦略をとっている企業の多くは、伝統産業分野の中小企業である。しかし、その戦い方は、厳しいグローバル競争に直面しているエレクトロニクス産業や自動車産業のグローバル企業にも貴重な示唆を与えてくれる。

日本のグローバル企業はこれまで、品質のよい製品を安く売ることによって成長してきた。日本製品は費用便益効率の高さで勝負してきた。しかし、この戦略は通じにくくなっている。韓国や台湾・中国から低価格戦略をとる追随者が出てきたからである。品質がもたらす便益は日本製品ほど高くなくても、価格の安さで勝負している。発展途上国では便益は小さくとも、それ以上にコストが安いことが優位をもたらす。品質で勝負してきた企業が品質を下げるのは難しい。後から追い上げる企業の強さは、人件費が安いだけではない。問題解決のコストも低い。先に進む企業は、問題を解決するために試行錯誤をする必要があるが、追いかける企業は何をすべきかがわかっているから試行錯誤のコストが不要である。先に進む企業が追いかけてくる企業にコストで対抗することは難しいのである。このようなコスト劣位を考えれば、日本のグローバル企業も、安く売ることではなく高く売ることにもっと知恵を絞るべきではないか。日本のグローバル企業が自社製品を高く売ることにもっと知恵を使うようになったら、デフレも克服されるだろうし、企業価値も高まるだろう。

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